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評者◆秋竜山
無人島マンガの面白さは、の巻
No.3461 ・ 2020年08月29日




■無人島といわれて、すぐに「無人島マンガ」が頭に浮かんだら知的なセンスのある人間であると思う。なぜならば、無人島マンガというものを知っているということだ。「無人島マンガ」って何だい? と、いう人が、かつて多かった。特に田舎へいくとそうであって、無人島マンガって都会的なものであると思ったこともあった。今は、そんなことはない。昔の子供が大人になったせいだろう。よく、無人島マンガと孤島マンガとどっちが正しいのか? なんて議論しあったものであった。私は、どっちでもよかった。だから孤島マンガといってマンガを描いていた時もあった。どっちでもよいというのは今でも変わりがないが、そして、無人島マンガといってマンガを描くほうが多くなった。孤島マンガ論者にいわせると、人が住んでいるのに無人島というのは変ではないか? と、いうことだった。考えてみると、たしかにそういえなくもない。私が無人島マンガというのは、かつてこの島は人も住んでいないで無人島であったということだ。そのことが大切であって、無人島に人が住みついたということに意味があるのである。孤島にも人がいなかったのに住みついたとしても同じではないか、といわれるかもしれないが、そのへんの、とらえかたというか、センスの問題である。海外の無人島マンガなどをみるとよくわかるが、絶海の孤島、一坪ほど、一人か二人でいっぱいになってしまうというところに人が住んでいるのである(もちろん日本のものもそーだけど)。
 外山滋比古『乱読のセレンディピティ――思いがけないことを発見するための読書術』(扶桑社文庫、本体五八〇円)では、
 〈人間のことばはもともとは、読んだり書いたりするものではなかったのである。まず、しゃべることから始まる。はじめは相手を考えずにことばを発することもあって、しゃべるというより、ひとりごとに近いことばである。やがて、相手とことばをかわす会話が始まる。さらに学校へ行って教わるのではなく、生活の中で自然に話の仕方を覚える。その段階でのことばは、おもしろく、たのしく、頭のはたらきをよくしてくれる自然な活動であることが明らかになる。(略)おしゃべりは二人で成立する。しかし、二人では足りない。三人寄れば文殊の知恵、というように、二人より三人の方が、知恵が出やすい。しかし、三人でもなお足りない。(略)〉(本書より)
 まさに、いえるのは無人島マンガのヒトである。無人島マンガに出てくるヒトは、一人か二人の相手とする。つまり大勢を省略させて二人、あるいは三人ぐらいがいい。無人島マンガの面白さは単純性にあるのである。やはり、そして、なんといっても、相手は〈男と女〉である。男と女さえいれば充分である。それが人間の単純化というものだ。男と女の行動が笑いとなる。男と女が二人であった時は平和な毎日であったのに、もう一人が漂着する。どーなるか。人間ドラマはさらに進展していく。漂着した一人は男であったのか、女であったのか。無人島に一人で生活していた時は人間は〈相手〉がいなくては生活できないなどと考えたりもしたが、本当に相手というものは必要であるかどうかはギモンである。心から「アー、せいせいした」と、あおむけにひっくりかえって手足をのばすのは一人になった時である。よく、「無人島へ行くとしたら、どんな本を持っていきますか?」などという決まった質問がある。ぶ厚い本がよい。マクラにするしかないからである。








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