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評者◆添田馨
現代権力論――権力悪を支えつづけるもの⑥
No.3460 ・ 2020年08月15日
■新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、終息への見通しもまったく立たない状況下で国会を閉会し、国のリーダーシップが最も求められている時に、明確な方針さえ打ち出せず、国民への説明はもっぱら担当大臣等に任せきりで自分は決して「矢面」に立とうとしない。予想はできたことだが、いざそれが現実になってみると政治家としての指導力のあまりの貧困ぶりに、寒さとおぞ気とが同時に襲ってくる。
安倍一強だとか長期政権だとかいわれるなかで、そもそも総理本人の政治家としての志とかモチベーションといったものが、本当にこの人にはあるのだろうかという疑問がひときわ強固になった。まず、その言葉に“身体”が感じられない。原稿を読みあげる声は聞こえるものの、本当にそれが心の底から出てきた言葉だと感じさせる何かがない。これはスピーチテクニックの巧拙や漢字が読める読めないといった次元の話ではまったくない。 もしも、彼が総理の椅子へ執着する最大の動機が、政権の座のできるだけ長期にわたる維持というただその一点にあり、憲法改正も経済政策もコロナ対策さえもすべての政策カードはその目的のための手段でしかないのだとしたら……。足掛け九年もの間この政権の一挙手一投足をウォッチしてきて、こうした疑念は私のなかでますますその強度を増している。 たんに総理総裁としての能力や資質に欠けるといった牧歌的な話では決してない。犯罪性が疑われるいくつものスキャンダルが、この政権には影のように色濃くつきまとっているからであり、森友問題においては現実に自殺者まで出ているのだ。普通なら辞任して当然のケースであっても、そうなっていない。これは総理ひとりでできることではなく、政・官・民からなる取巻き連の共同謀議なくしては到底なしうることではないだろう。 安倍晋三に政治家としての信念が仮になくても、ないことの証明は悪魔のそれであるから、“悪魔の総理”という称号は依然として有効だろう。 (つづく) |
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