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評者◆添田馨
現代権力論――権力悪を支えつづけるもの⑤
No.3456 ・ 2020年07月18日




■第一次内閣の発足時から数えておよそ八年間の長期にわたる安倍政権とは、この国の社会・政治風土においていったい何者だったのか。さまざまな言葉が、いま私の頭の中を去来する。事実、さまざまな言い方が可能であろう。ただはっきりさせておかねばならぬのは、安倍政権とは総理総裁たる安倍晋三という個人によって性格づけられた特異な政体だということだ。つまり安倍政権を問うことは、安倍晋三という存在の闇を問い糺すこととイコールなのである。
 いま私の手元に一冊の本がある。タイトルは『美しい国へ』。著者は安倍晋三その人だ。発行されたのは二〇〇六年七月。帯には「戦後生まれ/初の首相、誕生」とある。「初当選して以来、わたしは、つねに『闘う政治家』でありたいと願っている」――冒頭で彼はこう述べていた。自身の著作でしかも一人称で語られた決意表明であれば、他人がこれを疑う筋合いはない。本気の弁だと信じるしかない。
 だが、同じところで彼は「闘わない政治家」のことを「批判の矢面に立とうとしない政治家」だとも述べている。なるほど、そういう意味でなら彼はいつも「批判の矢面」に立たされっぱなしだった。つまり言葉どおり立派に「闘った」のだ。では、いったい彼はこの八年ものあいだそんなにガチで何と「闘った」のだろうか。
 この問いを、私は総理本人に投げつけよう。本当に「闘った」と言うのなら、それは自分自身への「批判」に対してだけ、激しく本気で闘ったのではないのか。「批判」の中身はいろいろだが、実態としてはそうだった。ここがもっとも重要な点だ。彼はつまりほかの誰でもない、自分自身のためだけに「闘った」のだ。何によって? むろん、総理総裁としての権力によってである!
 彼がやったことはつまり“私闘”であって、政権の利益擁護のために公的な国家資源を膨大に浪費したのである。周りをみたまえ。彼が飽きもせず大人の火遊びを続けたがために、あたり一面には夥しい焼け跡ばかりが残ったではないか。
(つづく)







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