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評者◆添田馨
現代権力論――権力悪を支えつづけるもの②
No.3443 ・ 2020年04月11日




■政治的な独裁には、制度化した独裁と制度化はしていないが体制に食い込んだ独裁とがある。第二次安倍政権を支えているのは、後者、つまり体制に食い込んだ独裁にほかならない。中でも私がとりわけ危険視するのは、ブラックボックスと化した官邸密室内における不透明な意志決定の在り方である。
 その危険性がひろく白日のもとに曝されたのが、今回のコロナ騒ぎに便乗して安倍総理が矢継ぎ早に打ち出した一連の自粛や休校の要請だった。特に全国の小中高校の一斉休業要請という暴挙は、たんに学校現場のみならず私たちの社会全体をも巻き込んだ大規模な“二次災害”だったと言っても過言ではない。
 いくつもの問題が指摘されているが、私が最も由々しいと考えるのは、政府や内閣の意志ですらない、いうならば総理個人の独断によって、今回の事態が招来せしめられたというその事実にある。当然ながら、その要請に法的な根拠はなにもない。そんな非合法な要請が日本の社会生活をズタズタに破壊したのである。総理の要請だというただそれだけの理由で。
 広く指摘されているのがひとりの総理秘書官の存在だ。総理の独断といわれる今回の無茶苦茶な要請は、この秘書官の入れ知恵だというのである。事前に専門家の意見を聴くでもなく、政権内の担当閣僚に相談するでもなく、全国民を巻き込むこれほど過重な方策が突然出てきたということは、これが最初から国民生活を度外視した場当たり的なものだったことを物語る。
 考えられるのは、苦境に立たされ影の薄くなった総理にリーダーとしての積極的な役割を国民にアピールさせ、さらには内閣支持率をもアップさせて、政権の安定維持につなげたいというこの秘書官の思惑だ。すべてそこが起点になって、今回の一連の自粛要請がなされたのだとしたら、そして政権内の誰もがそれに反対できない統治体制なのだとしたら、これは総理秘書官の総理秘書官による総理のための独裁以外の何ものでもない。
(つづく)







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