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評者◆伊達政保
焦点を立候補者個人に当てることで原監督らしい作品に――原一男監督の最新ドキュメンタリー映画『れいわ一揆』
No.3443 ・ 2020年04月11日




■原一男監督の最新ドキュメンタリー映画『れいわ一揆』を特別先行上映(監督のトーク付き)で観た。なんと4時間以上の作品だ。原監督の映画を観たのは何年ぶりだろう。『さようならCP』『極私的エロス 恋歌 1974』『ゆきゆきて、神軍』『全身小説家』と観てきたが、それ以降の作品を観てはいなかったのだ。今回の映画は昨年夏の山本太郎代表率いる「れいわ新選組」の参議院選挙のドキュメンタリーで、題材としては意外に思ったのだが、焦点を立候補者個人に当てることで原監督らしい作品となっていた。いや逆だ。「女性装」で知られる東京大学東洋文化研究所教授・安冨歩が「れいわ新選組」から参議院選挙に出馬を決めたことにより、その選挙活動を追うことで、他の候補者個々人と「れいわ新選組」が捉えられたのだ。
 やはり一貫して「子供を守ろう」と訴える安冨氏の存在感とその言葉が、全国を相棒の馬「ユーゴン」と巡るユニークな選挙活動の映像の中に映し出されていく。そして日を増すごとに増えていく「れいわ」を応援する各地のボランティアが、自分たちなりの方法で選挙運動を行っていく。そこにはこれまでになかった運動としての選挙が表現されているのだ。安冨氏ばかりではない。他の候補者もそれぞれのやり方、訴え方で選挙運動を行っていく。
 そこに見られるのは「れいわ新選組」の持つ独自の運動スタイルである。一定の主張が一致すれば後は個々の候補者が自由に好きなように選挙運動を展開し意見を表明すればよい。ボランティアを含め大衆の自由な運動としての選挙戦を闘っていく。そこをこのドキュメンタリーはしっかりと捉えている。オイラから言わせればこれは全共闘運動ではないか。それは行動する大衆が自然発生的につくりあげる直接民主主義の組織形態である。大衆運動だけがこれを産み出すのだ。選挙戦の最終盤、新橋駅での大集会は「渋さ知らズ」有志の演奏と参加者が混然一体となって、そのことをよく表している。この映像を使用するに当たっては、演奏参加者と映画製作者との間で多くの課題があったと聞くが、あの現場にいた者としてこの映像が残されたことは率直に喜びたい。
 選挙結果は周知のとおりだが、映画の中で山本太郎代表は次の衆議院選挙で政権を取りに行く、そのためには百名立候補させると発言している。選挙運動も運動であり、大衆運動が終われば政党的代議制民主主義が残る。トークで原監督は次の「れいわ」の衆議院選挙は撮らないだろうと話していた。昨年夏の候補者個人そして支援のボランティアが産み出していった選挙運動という大衆運動がこの映画で描かれているのだ。







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