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評者◆小嵐九八郎
女性への実に誠実な眼差し――坂爪真吾著『性風俗シングルマザー――地方都市における女性と子どもの貧困』(本体八八〇円、集英社新書)
No.3432 ・ 2020年01月25日




■書店で、ぺらぺらと捲ることもしないで『性風俗シングルマザー』の表題、『地方都市における女性と子どもの貧困』のサブタイトルの新書(坂爪真吾著、集英社、本体880円)を買ってしまった。
 理由は、俺が初めて女性の躯を知ったのは今から半世紀以上前の高校三年で、川崎の自宅から歩いて一〇分、南町という小料理屋の二階で、その後、大学に入って学生運動を始める前まで通い、でも、彼女達の“後輩”がどんなふうな命運になっているかを知らねばならぬと感じたのが一つ。もちろん、物書きになってからも何度も行ったが、店側は迷惑だったかも知れない、普通の赤提灯より割高としても飲むだけのためだ。二十五年ほど前は『ポロポロ』という新しい『新約聖書』じみた名作を書いた田中小実昌さんとも数回飲みに行っている。田中小実昌さんは店に入って半秒もしないうちに如何なる本業を営んでいるかが解った。同じく、当方の畏怖する思想家は一回こっきりしか案内しなかったけどついに解らずじまい。これが、また、いいのですな。
 この新書を読みたくなったのは「地方都市」がらみであることだ。東北の我が故郷も、人口減、駅前のシャッターが八割方降りての通り、あれこれと実にしんどい。風俗は風前の灯だ。
 この著者は、ある地方の県庁所在地とその周辺の町をまこと丹念に調べ、取材していて、シングルマザーになった離婚の原因とか児童扶養手当などデータをきっちり記してある。何より、デリヘルを含めての風俗で働き子育てをしている女性への実に誠実な眼差しばかりか「どうしたら、より、前向きになれるのか」を行政との関わりを含んで書いている。実際、著者の坂爪真吾さんは、風俗店で働く女性の生活や法律相談事業『風テラス』で汗を流している。だからこそ風俗経営者の生の声も行政との遣り取りも真実に満ちている。母親もまたシングルマザーで風俗だった世代続き、今、本人達の最も反世間である「自己肯定」欲の淡さも優しさに溢れ述べている。風俗で働く人人、行政の人達、当方もそうだが駄目男どもは“この一冊”として読んだほうが聡くなれそう。







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