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評者◆添田馨
日本国憲法の肖像――改憲論の変容と護憲⑦
No.3427 ・ 2019年12月14日
■“護憲”はいまふたつの勢力から挟撃されている。ひとつは自公・維新などからなる所謂“改憲勢力”によってである。もうひとつは国連憲章や立憲思想に範をおく九条改定論者や立憲的改憲論者の国会議員などによって。前者は帝国憲法への回帰志向を隠れた動機とし、また後者は現行憲法の条文上の不備を正すことを主な動機としている。
私はこれらいずれの改憲論に対しても反対する。前者に反対する理由は、それが理念的倒錯も甚だしい国家転覆に繋がる思想だからであり、後者に反対する理由は、いまがそれをやるタイミングではないからだ。 いま安倍政権がしきりに国会での憲法改正論議の開始を野党に呼びかけている。だが、このオファーに乗っては絶対に駄目だ。それは、奴ら改憲勢力の思うツボだからだ。数のうえで絶対的に不利な戦いを、憲法改正のような最重要案件をめぐる局面で行うべきではない。いま“護憲”が緊急に必要なのは、この“安倍改憲”に対してなのである。 特に私がこだわるのは憲法九条であり、これには指一本触れてはならぬと言い続けてきた。昭和天皇が最後まで贖うことをしなかった自らの戦争責任を、身代わりとして贖ったのが憲法九条だと信じるからである。平成天皇が憲法遵守のもとで「象徴としての務め」に全身全霊を尽くすと述べたのは、昭和天皇が果たし得なかった戦争責任の清算を、自分がすべて引き継ぐのだという固い意志の表明だった。令和の新天皇もその路線を継承すると宣言した。 これまで日本人の多くは憲法九条に根強い支持を与えてきた。その裏で、天皇ひとりが戦争責任の重すぎる十字架を背負い続けるこの「象徴天皇制」の欺瞞的な構造を、私たちはやはりどこかで終わらせねばならぬ。その心の準備を、日本人一人ひとりが今の内から胸に秘めておくのは必要なことだろう。具体的には憲法第一条の改正をも含む改憲論議のことを私は言っている。だが、まだ今がその時ではないのである。 (つづく) |
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