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評者◆ベイベー関根
涼しい夏にあげものを!(タイトルだけ変更)
あげものブルース
本秀康
No.3419 ・ 2019年10月19日




■いやー、毎日暑いねー(あてずっぽう)。そんな暑い日はとんかつに限る! と若いころならいってたと思うんだけど、さすがになかなかとんかつは食べられなくなってきたかなー。トシのせいか……。
 いや! トシのせいじゃない! むしろ、向こうのせい、つまりとんかつ屋の方がどんどん減っているからとんかつが食べられなくなってきているのだ!
 ローカルネタで恐縮だけど、神保町に20世紀にはあれだけあったとんかつ屋がいま全然残ってないもんね。いもやもあんなかたちで閉店しちまったし……。昔あれだけあった、とにかく量だけは負けません、みたいな体育会系御用達の店も減っちゃったよねー。代替わりが難しいという理屈はわかるけど、なんとかならんもんかねー。
 こんな前フリでお気づきの方もいらっしゃるだろうが、今回取り上げるのは、本秀康『あげものブルース』だ!
 独特の可愛らしい絵柄、独特のシニカルかつシュールな視線、『レコスケくん』等で光る音楽愛! というわけで、現在たいへん貴重な作家のひとりなわけだが、この音楽愛がまたスゴい。ジョージ・ハリスンの熱狂的なマニアであることは有名だけど、それだけでは飽きたらず、5年前には自分で「雷音レーベル」を立ち上げて、いまや大森靖子やRYUTistをリリースしたりしているんだからスゴいよなー。
 そんな本さん(「本」だけだと、本だか人間だかわからないので)が久々に、まる1年かけてじっくり作り上げたのが、この『あげものブルース』。
 以前カノジョとふたりでとんかつ屋に通いすぎたおかげでフラれてしまったというほど本さん本人もあげものが大好きらしいが、もちろんあげものネタだけで引っぱっていくだけではない。意外にも(!?)人間ドラマが満載なのだ! メインの登場人物は、杉山と浜田と徳永の3人。ちょっとした知り合いだったりそうでもなかったりするこの3人が、からあげ、てんぷら、とんかつとそれぞれのあげものに導かれるように人生を歩んでいく姿を描く(?)「あげものメドレー」正と続、そしてその間に置かれた長いパート「かりんとう」で本書は構成されてるんだけど、「かりんとう」では、本さん自身の個人的体験や父への思い出が投影されていたりして、これがまた泣かせるんだな~。幽霊が出てきたり、タイムスリップっぽい話になったりするけれど、本さんなりに、やはり時間の蓄積ということを引きつけて考えてみたくなったのか、と思うと、妙にシミジミしやがるぜ! いもやトリビュートなところもグッと来まくりだ!
 あと、この本、内容以外にもいろいろ驚くところがあって、カバーの裏としおりの組み合わせとか、別丁扉の用紙とか、そこに油で印刷してあったりとか、アイディアがいっぱい詰まってるんだけど、裏をひっくり返してみると最大の衝撃が! なんと、定価が本体1000円! や、安すぎる! 悶絶!







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