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評者◆寺田操
私たちを取り囲んでいるさまざまな「さかいめ」の存在――人が記憶として覚えていることは、ほんの上澄みだ
左子真由美詩集 RINKAKU
左子真由美
No.3415 ・ 2019年09月14日




■黒の地に白い線描、パウル・クレーの絵のような柔らかい曲線使いのカバー絵(美濃吉昭)の帯に一篇の詩が白字で刻まれていた。
 「それは/パンの竈の小さな種火/遠い昔に/消し忘れたままの/部屋の灯り/いつまでも/いわれのない懐かしさと/寂しさで/わたしの肩をたたく/愛しいシグナルよ//あなたはだれ?/だれの指?」(「シグナル」)
 ふいに明かりを落とした小さなステージに誘われ、遠い日にライブハウスで聴いたシャンソンを思い出した。一人の詩人が歌うように静かに詩を語っている。初冬のパリ「カフェ・プーシキン」で見た年老いた男女の物語を、パリの路地裏で風船を売る「マリアンヌ」のつぶやきを、戦場の血の記憶を流す「この雨」のことを。
 シャンソンは「三分間のドラマ」といわれる。過ぎてきた日々の陰翳を幻燈のように映し出すかと思えば、エスプリの効いた語りを未来へ向けて響かせる。「シグナル」は人生の交差点の信号であると同時に、世界を照らす小さな「徴」ではなかろうか。
 「りんごをなぞるように/きみのりんかくをなぞる/ふしぎだ/せかいと/きみとに/さかいめがあるなんて」(「輪郭」)
 目の前にいる誰かの顏をスケッチしているのか、それとも記憶のなかの誰かを思い浮かべて描いているのか、あるいは愛しい人の...







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