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評者◆ベイベー関根
自分を引き起こせ! ネット漫画で!
ダルちゃん 1・2巻
はるな檸檬
No.3399 ・ 2019年05月18日




■しばらく前から、本になったら取り上げてーなと思ってたネット漫画が2本、わりと次々刊行されたんで、今回はそのへんを!
 まず、はるな檸檬『ダルちゃん』1~2巻。資生堂のWeb花椿に連載されてて、ネットではけっこう話題になってた作品だ!
 丸山成美24歳の真の姿は、ダルダル星人のダルちゃんである。ふだんは「ふつうの派遣社員」に擬態して日々を過ごしている(でも、SFではない)。幼少期からふつうの人間の行動の意味がよく理解できぬまま、周りに合わせて生きるすべをなんとか習得し、素を隠しつつ日々を過ごしてきたのだ。タチの悪い男性社員に弄ばれそうになったりしながらも、会社の同僚、サトウさんに詩の世界を教えられて、自分の居場所を見つけたダルちゃんは、片脚の悪い新しい同僚、ヒロセくんとつきあうようになるが、彼は彼で自分のプライバシーに極端にこだわる人で、ダルちゃんが自分のことを詩に書くことに反対する。失望したダルちゃんは、また擬態の日々に戻っていくが、ある日サトウさんが紹介してくれた彼と出会ったことが、ダルちゃんの運命を変えていく……。
 という、つまり女性の生き方見直しマンガなんだけど、よくある古傷なめ系みたいに見えつつ、作品全体が登場人物に対していい距離感を保てているとこが光ってると思うなー。ハデな演出をせずに、パステル系の色調で人物たちを優しく見守ってる感じ。フルカラーで刊行したの、英断! 意外に骨太な結論にたどりつくのもエラい!
 この作品で扱われるテーマは、はたからはささいなものにしか見えないかもしれないけど、自分の生き方をすでに決めちゃった人じゃなくて、ヨワヨワな人がこういう問題に立ち向かうところが大事だと思うんだよね。1970年代くらいまでは、女はどんなに強くても男に添うのが結局幸せ、みたいなイデオロギーが世を席巻していたからなー。映画になるけど、渡辺祐介『にっぽん美女物語』とか、途中でどんなに研ナオコがはっちゃけても、最後は男に頼るところに着地しないと話として許してもらえない、みたいな感じで、ホント惜しかった! それでも、男に頼らなくてもいい、という女性像を作っとくことは超意味あったと思うんだ!
 もひとつ、そのダルちゃんが自我に目覚める(?)きっかけになっているのが詩だってところもシブいよなー。書いた詩をサトウさんに認めてもらってダルちゃんが泣くシーンでは、思わずもらい泣き……。ここでは、思いのたけを書くのが詩だ、みたいなややダサめな捉え方になっているけれど、いやいや、それだっていいですよ! 詩こそ創作の王なのだ!
 著者のはるな檸檬は、知る人ぞ知る宝塚フリークで、そのへんのコミックエッセイも面白いっす!
 あれ、今回はもう一作取り上げるつもりだったんだけど、書ききれなくなっちゃったので、次回また!







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