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評者◆秋竜山
漫画とは何か!!、の巻
No.3394 ・ 2019年04月06日




■漫画とは何か。とか、漫画の定義は? とか、まずそこから始まって漫画をはじめるということはないだろう。では、漫画を描くきっかけとは。漫画を描きたくて、たまらない。なぜ、描きたいのか。やたらと描きたいのである。漫画が好きだとか、キライとかなど考えることもない。悪魔のささやきというが、神のささやきとかいうほかない。耳元で「描け」と、いわれたというのが正しいだろう。そのように、ささやかれたものだけが、漫画を描きはじめるのであって、ささやかれたら漫画など描くこともないだろう。神のささやきは「金にはならないが漫画を描け」であった、昔は。ところが今は、「金になるから漫画を描け」である。金になるのは何人かであって、金にはならないのである。細木原青起『日本漫画史――鳥獣戯画から岡本一平まで』(岩波文庫、本体七二〇円)で、漫画について。
 〈一体漫画には定義はないのである。方式もなし形式もなし、材料を択ばず、取材を選ばず、自由勝手放題なのだ。〉(本書より)
 それでも若い時、「漫画とは何か!!」なんて、仲間と喫茶店などで、一杯のコーヒーを飲んでしまうと店を出なければならないので、コーヒーカップの底のほうへ少しばかり残して、「まだ、飲んでますよ」と、ばかりにテーブルに置き、漫画論のようなことをペチャクチャしたものであった。結局は、漫画とは金にならないものであるが、やめられないものである!! なんて、いう奴もいたりして。それは大いにいえる!! なんて、笑いあったものだが、漫画家をこころざすものとしては、なんとも不安になったものであった。漫画家になりたいものは、みんなそんな思いであった。
 〈純正美術に対する漫画という一箇独立した名称のものが存在するようになったとすれば、其処に自然、朧げながらも、世人の蒙を啓く為に一本の杭を打ち込むの心要にせまられて来た事において岡本一平氏はこう定義を下して居る。
 漫画とは宇宙間の万物につきて、その現状並に相互間の交渉する実相を解剖択剔し、その結果の美を表現する絵画を謂う。(略)即ち純正美術が美その物に執着してこれを第一義に置くに対し、漫画は人世の機微に喰い入ってその実相を穿つを第一義に置き、美をその次ぎに置くだけの相違であるが、その第一義を現わす美の表現法に依って何等の拘束を受けない処に、捕われ易い純正美術に対して大自由がある。〉(本書より)
 岡本一平の「漫画全集」を後年、そろえたものだが、漫画とは定義がないものであると私はそのように思いこんでいたのであったが、岡本一平は漫画論の中で漫画の定義というようなものを記していた。「あることは、あるんだ」と、私は思った。たとえば、漫画学校のようなところで「漫画とは定義などというものはありません。方式もなし、形式もなし。ハイ、おしまいです」と、先生にいわれたら、何のために学校へきたのかわからなくなってしまうだろう。せめて、漫画の描き方の一つでも、とお願いしたところで、「自由に描けばいいんであって、描き方などいっさいありません」と、いわれたら、それでは何のために学校があるんだ!! と、いうことになる。「漫画というものはそういうものですから……」と、いうのが漫画学校というところである。







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