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評者◆秋竜山
遅刻のいいわけ、十人十色、の巻
No.3390 ・ 2019年03月09日




■待ちあわせ時間に、おくれてくる人。「どーも、どーも」と、いう。どうして、「どーも、どーも」なのか。「やー、まいった。まいった」なんてのもある。なにが、まいったなのか知らないが、必ず、そういいながらやってくる。おくれてくる人、そのいいわけが十人十色である。
 築山節『脳が冴える15の習慣』(NHK出版、本体七〇〇円)では、〈「失敗ノート」を書こう。自分の批判を大切にしよう〉と、いうコーナーがある。〈失敗は脳からの警告〉の中で、
 〈脳の問題を自覚するもっとも良い方法は、自分がした失敗を分析することです。特に繰り返しする失敗には、脳の悪い使い方や機能の低下が分かりやすく表れています。〉(本書より)
 よく考えてみると、〈おくれてくる人〉の〈おくれ〉も、一つの失敗であろう。自分がした失敗(おくれてきたこと)を分析することです。と、本書はいう。「やあ、失敗した。失敗した」と、いうが、なにを失敗したのかいわない。「やばい、やばい」もあるが、これとて、なにがやばいのかわからない。
 失敗ということでは、私もあまり大きな声ではいえない。〈おくれ〉であった。「あいつらしいや」ということになったらしい。かなり昔の話である。大阪万博の時のことだ。漫画集団が万博に招待された。イベントのプログラムの一つとして万博会場の大広場に巨大な紙を置き、そこへ集団員でマンガの寄せ描きをする。当日、朝たしか九時頃だったと記憶しているが、その時刻に東京駅ホームで、待ち合わせすることになっていた。私は、その時刻にあわせて家を出た。そして、東京駅に九時きっかり。私は指定された何番線かの電車のホームへ着いた。ところが、そのホームには集団員の姿がない。「なんて、ことだ」。私はプリプリしながら家に帰った。自宅へつくと同時ぐらいだった。電話があった。「秋サン! なにをしているんだ!!」。新幹線の車中から仲間の電話であった。たしか浜松あたりだった。私は約束時間の九時にホームにいったのだ。その九時の時刻は集合ではなく、新幹線の発車時刻であったのである。もう弁解のしようがない。私の失敗であったのだ。結局は、大阪万博へは出席できなかったのであった。
 〈分析し、改善の指針にするには、まず失敗を記録しなければいけません。〉(本書より)
 失敗を記録するということは、自分の脳にいいきかせる、ということである。自分の脳を自己管理するということだ。
 わすれるということで、本書では、傘のわすれを取り上げている。どうして、わすれるのか。なぜ、傘をわすれるのか。それには理由がある。傘の一本の値段にあるようだ。わすれてもいい値段ということだ。一本何万円もするような傘をわすれるはずがない。雨がふっている時は、傘は意識の中にあるのだが、雨がやむと、とたんに無意識の傘になってしまうということだ。無意識の傘というのは、もう傘の役目を果たさないということだ。わすれものの中でもっとも多いのが傘であるというが、つまりは、わすれられた傘ということである。よく毎日のむクスリを、その時刻に、「アレ? さっき、のんだような、のまなかったような」と、記憶からとんでしまっていることがあるという。これも無意識のクスリだ。







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