書評/新聞記事 検索  図書新聞は、毎週土曜日書店発売、定期購読も承ります

【重要なお知らせ】お問い合わせフォーム故障中につき、直接メール(koudoku@toshoshimbun.com)かお電話にてバックナンバー・定期購読の御注文をお願い致します。

評者◆秋竜山
3分間で人はキレるか?、の巻
No.3385 ・ 2019年02月02日




■近所に小さなラーメン店が開店した。おいしいという口コミで、行ってもすぐ食べられるというわけにもいかず、店の外で待たなくてはならないらしい、とのこと。よっぽど、おいしいのだろう。歩いて行けるところであるから出かけてみた。店の外には10人ほどが立って待っていた。その時、思ったことは外で何人待っているかということで、おいしさの証明になるのではないだろうかということであった。10人より20人、それより30人になれば、もっとおいしいだろう。100人となれば、もっともっとだろう。店の椅子が10人ほどであるということだ。もちろん私も、その10人待ちの中に加わった。10人待ちしたわりに大さわぎするほど、おいしいとは思わなかったが、まずくはなかった。
 久我勝利『絶対、人に話したくなる「時間」の雑学』(PHP文庫、本体七六〇円)に、
 〈人間というものは、だいたい待たされるのは嫌いなものです。食堂に行って、なかなか注文の料理が来ないとイライラしてしまいます。しかし、かならずしもそうとは限らないのが人間の不思議なところです。たとえば、行列のできるラーメン屋にわざわざ並んで待つ人たちがいます。なかには、1時間待ち、2時間待ちなどといったお店にも並んで待っている人たちもいます。(略)不思議なもので、行列のできる店では、待たされれば待たされるほど期待が高まるようです。〉(本書より)
 まったく私がそうであった。〈人間の不思議なところです〉と、本書にあるように、私もそんな人間であったというところだ。
 この文章の中でもう一個所、私もそーであったというのは、〈食堂に行って、なかなか注文の料理が来ないとイライラしてしまいます。〉と、いうことであるが、昔、子供が小さい頃、家族でデパートの有名なレストランであったが出かけて行った時、私の注文した料理だけが、待たされ、イライラがつのる中で、ついに私は切れてしまった。家族のものは食べ終わったのに、まだ出てこない。と、いうことはみんな食べ終わった家族を待たせて、私一人が出てきた料理を、家族が見まもる中で、あわてて食べることになる。家族一緒に食べるのをたのしみにきたのに。私は切れてしまった。「もー、いい」と、店を出た。子供にしてみると、こんなお父さんを見るのは、はじめてだったろう。その時以来、「お父さんは短気だ」と、いうことになってしまった。女房も、「私も、はじめて見た」と、いった。その時、一緒にいた両親も、「こんなことは、はじめてだ」と、いった。
 〈待たされるといえば、カップラーメンの3分間はどうでしょうか。世界初の即席ラーメン「チキンラーメン」が発売されたのは1958年のことで、お湯をかけて待つこと3分でラーメンが食べられるというのがウリでした。(略)カップラーメンは、3分間待つからありがたみがあるのであって、1分間ではありがたみがないというのも理由の1つでしょう。〉(本書より)
 発売当時の日本人は、黙って3分間待たされた。誰も文句はいわなかった。その3分間に切れたということを聞いたことがなかった。そういえば、病院は3時間待たされて、3分間で「次の方ドーゾ」となる。







リンクサイト
サイト限定連載

図書新聞出版
  最新刊
『新宿センチメンタル・ジャーニー』
『山・自然探究――紀行・エッセイ・評論集』
『【新版】クリストとジャンヌ=クロード ライフ=ワークス=プロジェクト』
書店別 週間ベストセラーズ
■東京■東京堂書店様調べ
1位 マチズモを削り取れ
(武田砂鉄)
2位 喫茶店で松本隆さんから聞いたこと
(山下賢二)
3位 古くて素敵なクラシック・レコードたち
(村上春樹)
■新潟■萬松堂様調べ
1位 老いる意味
(森村誠一)
2位 老いの福袋
(樋口恵子)
3位 もうだまされない
新型コロナの大誤解
(西村秀一)

取扱い書店企業概要プライバシーポリシー利用規約