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評者◆秋竜山
文句なしの本、の巻
No.3369 ・ 2018年10月06日
■山口路子『ココ・シャネルの言葉』(だいわ文庫、本体六八〇円)。文句なしの本だ。
〈どんなつまらない本でも必ず何か言いたいことがあり、何かしらの真実がある。〉(本書より) そして、シャネルについて。 〈シャネルは小説で人生を学んだと言っています。お針子から裕福な男性の愛人となり、いままでとはまるで違う豪華な屋敷での暮らしが始まり、時間だけはたっぷりとあったとき、彼女はひたすら本を読んで過ごしました。ただ読んでいたのではなく、学んでいたのです。〉(本書より) 本というものは、ただ読んだ、という読書法と、その読んだことを、学ぶという行為。この二通りがあるようだ。読めば、それなりに学んだことになる。ところが、さらに、学ぶということを自覚する。学ぶために読む。と、いうことだ。そして、シャネルがそうであったという。 〈フランスの作家アンドレ・マルローは言いました。「今世紀(二十世紀)フランスで三人の名前が歴史に残るだろう。ドゴール(大統領)、ピカソ、そしてシャネル」〉そして、〈イギリスの文学者バーナード・ショーは言っています。――二十世紀最大の女性はキュリー婦人とシャネルである〉(共に本書より) さらに、 〈「私はモードではなく、スタイルを作り出したのです」とシャネルは言いました。ガブリエル・シャネル・ココという愛称で知られ、いまも多くの人たちに支持されるこのファッション・デザイナーは、「女の生き方華命」を成し遂げ、二十世紀を代表する人物です。〉(本書、はじめにより) ホメられっぱなしである。 〈今からではもう遅い、と思うことはありますか?――シャネルが、モード界にカムバックしたのは七一歳のときでした。「退屈よりも大失敗を選んだの」という言葉のとおり、困難覚悟の決断でした。それから八十七歳で亡くなるまで、最前線で働き続けたのです。〉(本書より) 文句なしの生き方である。 〈人生――私はこうなりたいと思い、その道を選び、そしてその想いを遂げた。〉(本書より) 理想的なうらやましい限りの生き方である。七一歳という声を聞くと「さあ、どーする」という別の声が聞こえてくるものらしい。今からでも遅くないという声だ。ガンバレばなんとかなると思えてくるらしい。あと十年で八十歳である。そして、さらに十年を加えると九十歳である。二十年もあるというのだ。それまで生きれればの話でもある。 〈二十歳の顔は自然がくれたもの。三十歳の顔は、あなたの生活によって刻まれる。五十歳の顔には、あなた自身の価値が表れる。〉(本書より) 年をとるということは顔に表れるということであるらしい。表れなかったら、どーしましょう。表われても、どーしましょう。どっちにしても、どーしましょう!! ということになるのである。百歳まで生きなければ損だという時代になったようだ。「アッ、しまった。こんな顔になってしまった」と、鏡を見て、あわてる時代がくる。さあ、これからの生き方として、顔で勝負ということになるようだ。うれしいような、うれしくないような……。 |
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