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評者◆秋竜山
人間とは馬鹿なり、の巻
No.3365 ・ 2018年09月01日




■寅さんの名セリフに、「それを言っちゃおしまいよ」と、いうのがある。橘玲『言ってはいけない――残酷すぎる真実』(新潮新書、本体七八〇円)を、読んだら、やっぱり「それを言っちゃおしまいよ」と、いうだろうか。
 〈ひとは幸福になるようにデザインされているわけではない。私たちを「デザイン」しているのは誰か? ひとびとはこれまで、それを神と呼んでいた。だがダーウィンが現われて、「神」のほんとうの名前を告げた。それは“進化”だ。〉(本書より)
 神さまが進化さまとなったのか。
 〈ダーウィンの「危険な思想」は、100年経ってもほとんど理解されなかった。1930年代になってようやくメンデルの遺伝学が再評価され、進化の仕組みが(まがりなりにも)説明できるようになったが、不幸なことにナチスによって誤用され、ユダヤ人やロマ(ジプシー)、精神病者など「遺伝的に劣った種」の絶滅を正当化する優生学になった。〉〈悲惨な戦争が終わると、「進化論は自然や生き物の不思議を研究する学問で、知性を持つ人間は別だ」という“人間中心主義(ヒューマニズム)”が政治的に正しい態度とされるようになった。〉(本書より)
 ナチスに対し、「それをやっちゃおしまいよ」ではなかろうか。
 〈「言ってはいけない」とされている残酷すぎる真実こそが、世の中をよくするために必要なのだ。〉(本書より)
 知らないふりをする。排斥されるのが恐ろしいから。真実というものは、「言ってはいけない」となる。で、馬鹿について、ということになる。神は人間を自分ににせて創造した。ところが、馬鹿をつくってしまった。なぜならば、人間とは馬鹿なりであるからだ。神は間違って馬鹿をつくったのではなく、神さまそのものが馬鹿であったということにならないだろうか。「お前、馬鹿だなァ!!」と、いって、ケンカになる。言葉たらずである。「お前、馬鹿だなァ!! 俺も馬鹿だけど」と、いうべきである。それでケンカになることはないだろう。昔、国会で「バカヤロー解散」と、いう事件があった。あの時、「俺もバカヤローだけど」と言えばよかったのだ。相手に「バカヤロー」というだけでは、「言ってはいけない」ことになる。「俺も」をいれれば「言ってもいいこと」に、なる。神がもし、「まったく、人間って馬鹿だなァ」と、いったとする。それは「言ってはいけないこと」になる。「神である私も」と、いえば「言ってもいい」ことになる。本書に〈馬鹿は遺伝なのか〉と、いう項目がある。
 〈子どもの成績が悪いのは親が馬鹿だから〉(本書より)
 「その通り、頭の悪い親から生まれたから、キミは頭が悪くて当たり前だ」と、学校の先生がいう。これは「言ってはいけない」ことになる。
 〈学校教育では、すべての子どもによい成績を獲得するようがんばることが強制されている。もしも知能が遺伝し「馬鹿な親から馬鹿な子どもが生まれる」のなら、努力は無駄になって「教育」が成立しなくなってしまう。〉(本書より)
 自分のことを考えてみるとよい。そして、親のせいにするのが利口というものだろう。







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