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評者◆秋竜山
格言とは忘れさるもの、の巻
No.3358 ・ 2018年07月07日




■格言を信ずるものは、素直な奴であると思っている。信じればすくわれるという素直さをもっている。ひたすら信ずれば格言どーりになるような気がしたものだ。十代の頃、マンガ家を夢みていた仲間たちの間で一番流行ったのが、「天才は九十九パーセントは努力である」という「ひとこと」であった。俺は天才ではないが、九十九パーセント努力すれば、マンガ家になれる。という他力本願のようなものであった。ところが、九十九パーセント努力するといっても、何を努力すればいいのか仲間の間では誰一人わからなかったが、「とにかく九十九パーセントの努力」ということばに救いのようなものがあった。仲間の安アパートのカベには、このように記された紙切れがはられてあった。つまり素直さにおいて、同レベルの証明のようなものであった。マンガ家になるんだという意気ごみのようなものであった。会話の中にも必ず、この「ことば」が出てきたものであった。あの有名な大天才も、本当は九十九パーセント努力したのか。それで、俺たちも努力すれば大天才になれるという希望を持っていたことは事実であった。そして、どーなったかというと、誰もマンガ家にはなれなかった。なぜ、なれなかったのか。九十九パーセントの努力がたりなかったのか。その時は、そんな格言のようなものをカベにはって毎日ながめていたことも遠い昔のこと、というか、そんなことは忘れてしまっていたことであった。そして、忘れずにひたむきに努力したからといって、マンガ家になれたであろうということもなかったろうということであった。格言とは忘れさるもの、である!! ということだ。
 一校舎比較文化研究会編『自分の心をみつける ゲーテの言葉』(ナガオカ文庫、本体四八六円)では、私にとっても想い出の深い、言葉の記憶はかなり遠のいてしまっているけど、そこで、あらためてページをパラパラ。
 〈知の巨人ゲーテは、激しく直情型の性格で、失敗をしては反省をし、82年間の生涯にわたって恋愛をし続けた、言ってみれば、とても自分らしく生きた人物だった。本書は、そんな人間味あふれるゲーテの文学作品の中から、特に印象に残る言葉をあげて、自分を見つめ直すヒントをつかみ、迷いのない、自分らしい人生に変えていくための本です。〉(本書カバーより)
 友人のマンガ家の部屋のカベにはってある格言をこっそりメモして家に帰って、それをカベにはったりした。その友人が家に遊びにきて、このカベの格言を見て、「アレ?」という顔をさせた。そして、二人で大笑いしたものであった。そして、面白いのは、この格言をカベにはっていたものの誰一人として、ついにマンガ家にはなれなかった。なったとしても、天才マンガ家にはなれなかったということであった。格言というものは実にいいことをいっている。格言でくだらんものは一つもないだろう。格言力というか、格言バカというか。みんな若かった!! そのひとことにつきるだろう。







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