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評者◆秋竜山
「考える」ってどういうことだ?、の巻
No.3354 ・ 2018年06月09日




■「なに、考えごとをしているんだ」
 「「考える」と、いうことを考えているんだ」
 「?」
 外山滋比古『「考える頭」のつくり方』(PHP文庫、本体六二〇円)は、以前出ている「思考力」を改題し、加筆されたのが本書。思考力から考える頭となる。考える頭にはつくり方があるということだ。本書、「考える」を考えるコーナーでは。
 〈いまの学生は、自分でものを考えるということがどういうことなのか、よく理解できていない。口ではよく「考える」いうことばを使っているが、「……と思う」とか「……だろう」と言うときに、「考える」と言っているにすぎない。社会に出て、学歴で昇進するコースに乗ってしまえば、考える必要がないから、ますます思考から遠ざかっていく〉(本書より)
 「なに、考えごとをしているんだ」「「考える」と、いうことを考えているんだ」「?」
 〈いま、日本の大学で「考える」ことを真剣に教えているところは、きわめてすくない。教えようとしても、「考える」こと自体がわからないというのだから、話にならない。思考とは、これはなにか、なぜそうなのか、という疑問をもって、それを自分の力で解こうとすることをいう。たとえば、二つのものがあって、どちらがすぐれているか比較、判断するのが「考える」ことである。どちらかに決めたら、なぜそれがすぐれているかを論理的に説明できなければならない。それに対して、「思う」とは自発的ではなく、あくまでも受け身である。(略)何かすでに存在しているものを受けて「思う」。「感じる」も同じことである。〉(本書より)
 「考える」となると、どーしてもひきあいに出したくなってしまうのが、あの上野の「考える人」の像である。たしかに、彼は「考えているのか」「考えていないのか」「思考しているのか」「いないのか」、あの像をいくら見ていても、わかるわけがない。もしかすると、そんなふりをして居眠りしているのかもしれない。もし、あの像の首がコクンと一回でもさがったとしたら、居眠りまちがいなかろう。それもない。本書に「歩いて考える」というコーナーがある。
 〈散歩の効用は、古くから知られていた。古代ギリシアの人たちも、散歩をしていると頭がよく働くと考えていたらしい。アリストテレスを中心とする「逍遙学派」という一派は、散歩しながら、考えたり、議論したりしたことから、その名がついた。〉(本書より)
 考えごとをするには、散歩することが一番よいという。ベートーヴェンやゲーテやカント先生などよく散歩したという。
 〈座って本を読んだりしていると、かえって頭の働きが衰えてくる、ということを自覚していたのだろう。〉(本書より)
 散歩といっても、何も考えないでただ歩くだけでは散歩の意味がない。家にこもって机にむかって本をひらいていても、ただひらいているだけでは、読んだ意味がないだろう。そして、あのロダン作の「考える人」も、ある時、像が消えていた。そして、「只今散歩中」とふだがぶらさがっていたら、どーだろうか。歩きながら考えているのだろうと、誰も思わないだろう。「サテは、逃げたかな?」。







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