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評者◆ベイベー関根
会社にももっと赤ちゃんを!
赤ちゃん本部長 第一巻
竹内佐千子
No.3352 ・ 2018年05月26日




■竹内佐千子といえば、レズビアンを題材にとった『2DK』『ハニー&ハニー』の人だったわけだが、まあそういう紹介ばかりになるのももったいないなーと思っていたわけだった。
 レズビアンの世界を描くマンガ家はほかにもいるよね、やまじえびねとか中村珍とか。マンガ界は、ほかの業界に比べると、レズビアンに対して、わりと鷹揚なんじゃないかと思うんだけど、いいことだよな。ほかのところだと、ゲイはまだしもレズビアンにはやたら冷淡で、そういう人が出てきにくい印象があるからなー。
 ただ、本人がそうだからといって、主題が本人のセクシュアリティがらみのものにのみ縛られてしまうのもまたちょっと不自由な感じ。そこでまるっきりトバしたところに着地してくれたのが、『赤ちゃん本部長』1巻だった!
 これは、株式会社モアイの武田本部長が、ある朝起きたら赤ん坊になっていて、しかし中身は47歳のおっさんのままなので、そのまま仕事を続けることにしたというところから始まるコメディ。
 出落ち!? 出落ちでしょ!! といいたくなるが、これがまた(前回同様)うまく切り抜けておるのよなあ。社内政治の(ライト)ドロドロ、さまざまな家族のかたち(当然LGBT含む)、うっすらとしているが確実に存在する男女差別、そしてもちろん子育てあるあるネタ。最初はこの子育てあるあるネタで引っぱっていくのかなーと思ってたんだけど、意外にそれ以外にやることがいっぱいあって、っていうのがこの作品のポイントかなー。
 特に、出社拒否ぎみになっちゃってる渡辺くんが本部長に自分の悩みを語りかけながら(本人はひとりごちてるつもり)、涙をこぼすシーンには、次に来るオチがわかっていても、ついホロリ……。
 だけど、会社とかチームにゆるかったり遅かったりする人がいるのは、長い目で見ればいいことだと思うんだよね。そういう人がいると、結果的には客観に近いものができるから。ここで本部長がいう「何かあったら必ず誰かに助けを求めろ」というのはありふれたアドバイスだけれど、それ以上に赤ちゃんが身近にいるっていうこと自体が周りをどこかしら解放してくれる、というのがこのマンガの教えじゃないかね。
 というか、まだまだ男性優位が強い「会社」のもっている感じがよくつかめているのにはちょっと驚いたなあ(このとおりではないだろうにしても)。おエラいさんが勢揃いして謝罪に行くとか、男の描く会社マンガでもなかなか出てこないぞ。それをまた自分が赤ちゃんであることを狡猾に利用してのりきるあたりがまた楽しい(笑)。
 あと、赤ちゃんをお目々パッチリみたいな、いわゆる可愛い感じじゃなく描いているのもいい感じ。赤ちゃんってそれ自体で可愛いからな。あー、もっと仕事場に赤ちゃんがふつうにいるようになったらいいのに!(←ただの子供好き)







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