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評者◆秋竜山
毎日、漫画漫画であった、の巻
No.3350 ・ 2018年05月05日




■岡崎武志『古本で見る昭和の生活――ご家庭にあった本』(ちくま文庫、本体八四〇円)。昭和という時代と、いうより、戦前・戦後といういいかたをする時代のほうがピッタリするようだ。そういういいかたも古くなりつつある。平成になって特に。そのうちに平成もなくなり、次は何という時代になるのか。もう、そこまできているようだ。年寄りは昔話をするしかないだろう。つまり、昭和の時代は、あーだった。こーだった。と、同じ話のくりかえしだ。遠い昔の時代のことほど記憶にありませんなんてことはないからだ。
 〈「漫画読本」という雑誌は、一九五四年(昭和二十九)に「文藝春秋」の増刊号として創刊され、のち月刊誌として、独立する。七〇年の休刊まで、世のサラリーマンたちを大いに楽しませた(略)〉(本書より)
 私自身、漫画と身を共にした時代であったから、漫画読本時代は、たんなる読者ではなかったはずだ。毎日、漫画漫画であった。昭和という時代に、なぜ、あのような熱く漫画に力を入れた世の中であったか。その後、火が消えてしまった。
 〈現在「漫画」という言葉から想像するストーリー漫画とは違う。一コマ、四コマ、もしくはその延長。長らく日本の漫画は、新聞の時事ものを除けば、児童・少年向けに限られていた。青少年の劇画誌「漫画アクション」「ヤングコミック」「ビッグコミック」が創刊されるのは六七、六八年。それまでのつなぎとして、「大人の漫画」を提供し続けたのが「漫画読本」ということになる。〉(本書より)
 漫画読本は月刊誌であったのだが、この時代は週刊誌の時代といってもいいだろう。「週刊漫画」「漫画サンデー」など、大人漫画が主役であった。大人たちがお金を出して漫画を読むことが、異常だったんだろうか。そして、読まなくなった今が、まともなんだろうか。よくわからない。今、あの当時に流行したような漫画雑誌を読みたいと思っても、日本中どこをさがしても一冊もないだろう。そして、その漫画ってどんな漫画ですか? と、いう時代である。
 漫画読本の功績とするところは、日本の大人の漫画のみならず、外国の大人漫画を毎号沢山紹介したことであった。外国の一流漫画を日本の書店で買って見られる時代であった。そして漫画の笑いには国境などというものはないということを知った。文字など読めなくても漫画の画だけで笑わせる力があることも知った。笑いは人間の本質そのものであることも知った。アメリカのヴァージル・パーチ。アメリカ中のあらゆる雑誌に描きまくった大売れっ子漫画家であった。スタインベルグなど天才漫画家など。フランス漫画からは、シャヴァル、ボスク、フランソワ、デュウウー。漫画読本が文藝春秋の臨時増刊として書店に並べられた時、私は駆けつけた。「子供の見る本ではない」と、断わられた。それでもほしくてオジに買ってきてもらった。
 〈以前、東京・浅草の「松屋百貨店」で定期的に開催されていた古本市を覗いたら、この「漫画読本」が大量に放出されていた。雑誌は読み捨てされるものが普通で、残りにくいものだが、これは捨てがたかったのか、いまでもけっこう古本市や古書会館が開く即売会などで見る。〉(本書より)
 あの時代、夢でもみていたのだろうか。







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