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評者◆秋竜山
一瞬どうでしょう、の巻
No.3346 ・ 2018年04月07日




■一校舎比較文化研究会編『自分の心をみつける ゲーテの言葉』(ナガオカ文庫、本体四八六円)をパラパラ。あいかわらずゲーテはいい言葉を発している。言葉というものはダラダラと長ったらしいものより、短ければ短いほどいいようだ。わかりやすいからだ。長ければ長いほど、聞く気が失せてしまう。たとえば四コマ・マンガ(すぐ話をマンガにもっていく私の悪いクセ。マンガ家ということから仕方ないか)。言葉は四コマ・マンガに限るだろう。四コマ・マンガは始めっから四コマの中で表現しなければならない。五コマだったら、あるいは三コマであったら四コマ・マンガとはいえないだろう。言葉も四コマという起承転結の短さがいい。一つのリズム感もある。そして、よいマンガとなると、文字を必要とせず、画だけで説明する。サイレント・マンガともいう。画だけだと言葉の国境がない。画は世界共通の言葉でもある。ためしに海外旅行をしてみるとよくわかるだろう。セリフなしの無言劇である。セリフなしの言葉ということか。昔、先輩マンガ家が外国のホテルでスリッパをほしくて、ボーイにスリッパを描いてしめしたところ、トイレにつれていかれた。スリッパを片方だけ描いたからであった。ゲーテの言葉も、瞬間芸を指摘している。瞬間言葉というか、一瞬言葉というか。瞬間に向かって呼びかけているようだ。瞬間とは、今である。「今でしょう」で有名である。「瞬間でしょう」も、共通して通用しそうである。「一瞬でしょう」でもいいかもしれない。一瞬とは、アッという間の時間。
 〈瞬間よ、止まれ――私は自由な土地で、自由な人々とともに生きたい。そういう瞬間に向かって私は「止まれ、お前はあまりにも美しい」と呼びかけない。生きている間には、ときに美しい瞬間との出会いというものがあります。そんなとき、人情としては「この瞬間がいつまでも続いたら」と願いたくもなります。でも落ち着いて考えれば、それがそんなにも美しくすばらしいのは、それが一瞬でのことだからではないでしょうか。ほんの一瞬の輝きだからこそ美しい、ということが確かにあるものです。〉(本書より)
 瞬間は見のがす恐れもある。
 〈花は散るからこそ美しく、形あるものはやがて崩れてゆくから美しい。いつまでも変わらず美しいものがあることを否定はできませんが、そうしたものは、その見え方に変化があるように思われます〉(本書より)
 美しい言葉とか、いい言葉も共通点があるかもしれない。
 〈「ファウスト」第一部「書斎」の場でファウストは、自分がある瞬間に向かって「止まれ、お前はあまりにも美しい」と言ったら自分は死に、その魂は悪魔メフィストフェレスのものになるという約束をしていた。〉(本書より)
 瞬間で思い出した。よく芸人が〈瞬間芸〉というのを演じたりする。そーだ。芸名をゲーテとして、「ただ今より、ゲーテによる一瞬芸をごひろうします」なんてのはどーだろうか。
 〈毎日の生活で出会うさまざまな場面も、みんな一瞬のうちに過ぎていきます。〉(本書より)
 一瞬の内に生まれ、一瞬の内に消えてしまうということか。むなしいような。







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