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評者◆秋竜山
戦後の「宮本武蔵」は映画の中で、の巻
No.3341 ・ 2018年03月03日




■小林信彦『女優で観るか、監督を追うか――本音を申せば⑪』(文春文庫、本体七五〇円)に、「宮本武蔵」のことが書かれてあった。 宮本武蔵といえば、又の名を吉川英治ということになるだろう。そして、私にとっての宮本武蔵は小説ではなく映画だった。だから、活字からのイメージの武蔵ではなく、映画のスクリーンからの動く武蔵であった。武蔵にはお通がつきものであって、お通とはそのものズバリの映画の女優であった。
 〈戦後の「宮本武蔵」(東宝)は一九五五年度米アカデミー賞の外国語映画賞を得たものだが、武蔵=三船敏郎、お通=八千草薫、又八=三國連太郎というキャストで、三國は悪くない。〉(本書より)
 戦後の「宮本武蔵」は映画の中で生きていたことになる。私などは子供時代であるから小説の武蔵のことはまったく、なじみがなく、もっぱら映画によっての作品によるものであった。昭和二十年代後半は、子供漫画(当時は児童漫画といっていた)の黄金時代であり、月刊漫画雑誌の全盛期で、その中での武蔵ということになる。多くの漫画家が、宮本武蔵の漫画を描いている。その時代の漫画を語る時は、必ず言わなければならないのは、今の時代の漫画とはまったく異なっているということだ。笑いをふくんだ内容であり、漫画家は笑いということを頭の中に置いて漫画を描いたものであった。かなりの数の武蔵を読むことができた。漫画における宮本武蔵であったから、吉川英治の長篇小説の中での武蔵など、まったく関係がなく、第一、子供にしてみれば、漫画からのパロディにおける、二刀流の武蔵であった。その頃、どのような漫画の武蔵があったかというと一〇〇%忘れてしまっているだろう。憶えているということは記憶に残る内容ということだろうが、漫画の武蔵は次々と生み出される漫画の武蔵であって、記憶するまでにはいたらなかったのである。きっと、いい作品もあっただろうが、駄目な私ということになるだろう。本書は映画の中の宮本武蔵である。
 〈人物を記すと、朱実=岡田茉莉子、沢庵和尚=尾上九朗右衛門、小次郎=鶴田浩二という堂々たるもので、イーストマンカラーと稲垣浩の演出に感心した。稲垣浩は戦前に、片岡千恵蔵の武蔵、宮城千賀子のお通でこのシリーズを作っており、ぼくがリアルタイムで観たのはそのあとの伊藤大輔の「二刀流開眼」と「決闘般若坂」の二本だと思う。初期の「宮本武蔵」では、月形龍之介が小次郎を演じていたというから、これは観たかった。〉〈戦後の三船版「宮本武蔵」は「一乗寺の決斗」「決闘巌流島」の三部で、お通はずっと八千草薫であり、又八の三國連太郎は第三部では他の役者に代っている。(略)〉(本書より)
 私の「宮本武蔵」は中村錦之助であった。そして又八(木村功)であり、又八の母のお杉ばばあは浪花千栄子であった。お通の八千草薫もステキだと思わせたが、私のもっとも好きなのは又八の木村功であった。「宮本武蔵。又八篇」を製作してほしいほどだ。







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