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評者◆ベイベー関根
コワくて笑える『人間失格』。
人間失格 第一巻
伊藤潤二
No.3340 ・ 2018年02月24日




■やあみんな、元気かい?『図書新聞』は読んでるかな? そうかい、そいつぁよかった! じゃ!
 おっとそういえば……みんなは『人間失格』って知ってるかい? 太宰治の書いたスゴい小説なんだぜ。
 太宰治っていうのは、君も教科書で読んだことがあるだろうけど、「走れメロス」を書いた純文学の大作家さ。筆が立つ上、めっちゃハンサムで、めっちゃモテたんだぜ。もういうことないよね、君とは大違いさ。だけど、太宰は自意識が強すぎて、結局他人の顔色ばかり伺う人間になってしまったあげく、最後には愛人と心中してしまうんだな。オーマイガッ!
 そんな太宰の心の内幕を見事に作品化した『人間失格』は、純文学の代名詞的存在で、かつ大ロングセラー。読んだ後で「オレ/アタシは太宰だ!」と思い込む人が、特に若い人の間で後を絶たず、大変だったんだぞ。それが本当に太宰の心の内幕かどうかは誰にもわからないけどね……。
 さあ、そんな『人間失格』がマンガになったんだ! しかもそれを描いたのは、『富江』や『うずまき』などのホラーで知られる伊藤潤二先生さ。え、純文学をホラー作家が? 意外! 意外だろ!?
 ところが、これがすごくうまくいっているんだなあ。『人間失格』っていうのは、周りの人間のことがまるで理解できない男の話で、そんな人間にとって世界はお化け屋敷さ。主人公の大庭葉蔵は、子供のころにはその不全感を見破られまいとわざわざ道化役をかってでるような子だったんだけれど、一歩離れてみれば、そういうひとり相撲というか、空回り自体がとてもこっけいなものなんだ。だけど、世界のお化け屋敷ぶりっていうのは、そう思う本人にしか見えないものだから、ふつうは誰もが見ているなんの変哲もない世界とは、同時には描きえないものなのさ。
 ところが、ホラーのみならず、ホラーすれすれのギャグを描くのも巧みな伊藤先生は、主人公をちょっとご自分にも似せつつ?(というか、森内俊之第十八世名人にすごく似てる気がする!)そのあたりの呼吸を実にうまく紙の上に描き出しているんだなあ。たぶん伊藤先生ご自身がホラーとギャグとは背中合わせであることを誰よりもよくご存知なのだろうね。さすがの組み合わせだよ!
 一方で、小説にあった「オレ/アタシだ!」感はどうしても薄れてしまうのはやむを得ないかな、そこが文字と絵というメディアの違いなんだろな。
 や、ごらん、このマンガ版『人間失格』のタイトルは、「失」の後ろに、さざなみの立った「人」が落っこちてる、みたいな感じだね。何だろうねコレ? 「人格」が崩壊していくとか言いたいのかな?
 あと、いつも思うんだけど、この主人公の「大庭葉蔵」って名前、本当は「大庭茅郎」にしたかったけどヤメタ、とかじゃないのかな? まあそれはともかく、またどこかで! じゃ!







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