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評者◆秋竜山
秋風亭竜山とは、これいかに、の巻
No.3340 ・ 2018年02月24日




■今は亡き、落語家の春風亭柳昇師匠が元気だった頃、「洒落というものは、これまでやらなくては……」と、柳昇師匠から私は〈亭号〉なるものを、いただいた。私は、「エエッ!!」と、驚いたのであるが、柳昇師匠は笑っていた。〈秋風亭竜山〉と、いう亭号であった。ちゃんとした認定書とか、よく寄席などにかかっている招きに、秋風亭竜山と職人による筆の文字が書かれてあった。どう見ても本物であった。私があわてたのは、落語の一つもできないド素人の分際である。落語家と漫画家の共通点というか似ているところは、笑いを主とした職業であることだ。春風亭柳昇と秋竜山ということで、秋風亭竜山としたのであった。さすが当代一の一流の落語家である。やることが違う!! と、私は、おそれいったのであった。ところが、私のちょっと気になるのは、「秋風亭」というのであった。柳昇師匠の春風亭というのに対し、私は秋風亭というのだ。春の風と秋の風との違いである。秋の風なんて、ちょっと雰囲気がよくない。いくら洒落であったとしても……。すると師匠いわく。「秋さん、そんなことはありませんよ」。春に種をまき、秋に実るということであるという。そういわれてみると、たしかに、それもそーだ!! と、ガテンがいった。
 日本の言葉研究所『覚えておきたい日本の美しい季節の言葉』(だいわ文庫、本体六五〇円)では、〈本書では、暦の言葉、風物、しきたり、大和言葉、季語などから「美しい季節の言葉」を選んで紹介しています。〉と、いうこと。〈第一章 春の言葉。第二章 夏。第三章 秋。第四章 冬〉そのなかから、〈第三章 秋〉をひろい出してみる。秋竜山という私の名前からして当然そうなるだろう。〈秋分〉がある。秋彼岸のお供え物といえば、「おはぎ」である。春彼岸に供える「ぼたもち」も同じものだ。子供の頃を思い出す。酒をのまない父は大の甘党であって、「おはぎ」「ぼたもち」は、我が家においては絶対的な力をしめしていた。「おはぎ」「ぼたもち」の記録として私は、母が朝つくったものを十二、三個食べたものであった。食べ終わると同時に、タタミの上にあおむけにひっくりかえった。「くった!! もーくえない」と息を発したのであった。田舎の「おはぎ」や「ぼたもち」は、おにぎり以上ある大きさであり、父は十五個は軽く食えたであろう。昔の人は今の人とくらべると、くらべものにならないだろう。漁師だったせいもあったが、ある漁師の青年が、当時、「もちがし」といって一個十円と記憶しているが、それを、いっぺんに七十個とか八十個食べたということであった。「うそだろう」と必ずいわれるが、「本当」だった。
 「秋声」、「秋の夜長」、「秋日和」、「豊の秋」、「秋冷」、「秋の灯」、「柿の秋」など。
 「秋深き隣は何をする人ぞ 芭蕉」「秋風のふきぬけゆくや人の中 久保田万太郎」
 「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる 藤原敏行」
 「白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり 若山牧水」
 秋風亭竜山とは、これいかに。







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