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評者◆伊達政保
1968年文化を論じる場合、やはり昭和40年代がふさわしい――四方田犬彦編著『1968 ①文化』(筑摩書房・本体二四〇〇円)
No.3340 ・ 2018年02月24日




■激動の1968年から50年、今後、関連書が何冊か出ると思うが、まずは四方田犬彦編著『1968 ①文化』(筑摩選書)が刊行された。以後『②文学』、『③漫画』が、全3巻の叢書として出るそうだ。ところがなぜか、本書にも帯にも近刊案内にも、それについて全く記載がない。四方田氏のFacebookで叢書のことを知ったが、何故?
 さて、四方田氏は巻頭の「〈1968年〉には何が起きたか」で、「これが最後の機会だ。今のうちならまだ間に合うかもしれない。すべてを可能なかぎり一ヵ所に纏めておかないと、細部は簡単に散逸してしまう」と「1968年からの数年間、日本を席巻していた文化」について憂慮を表明している。また、社会学者の中には、こうした文化が後年に神話化されたものと断定する不幸な傾向があると、名前こそ出さないが小熊英二らを批判している。そして「政治を表象する文化があったのではない。文化が政治的たらざるをえない状況が存在していたのだ」と高らかに断言しているのだ(原文ゴシックで平岡正明氏のテーゼみたいだね)。
 本書では、美術、グラフィックス、演劇、写真、舞踏、音楽、ファッション、映画、雑誌と、各項目について各々の論者が展開する形となっている。また写真や図版など資料が数多く掲載され、時代の記憶、記録として貴重なものである。しかし、論者においては、ジャンルの垣根を越えた文化の動きであったことを認識しながらも、その度合いに差があったり、ジャンルを都合よく整除するために、事実をあえて欠落させている論者もいる。歴史の捏造とまでは言わないが、こうしたかたちで歴史が消えていってしまうのだ。またそうした文化の情報伝達の役割も果たしていた、ジャズ喫茶については触れられていない。写真などはその出典を明示してあるが、現在の時点において、あえてどこの何の写真なのかの説明がなければ、ただの印象しか伝わらないではないか。
 1968年については、節目節目に多くの本が刊行されてきた。30年目に『1968年・グラフィティ』『連合赤軍“狼”たちの時代1969‐1975年』(ともに毎日新聞社)、41年目に、文化面ヘの言及を押さえたという、ある意味でトンデモ本の小熊英二著『1968』(新曜社)、翌年に四方田犬彦・平沢剛編著『1968年文化論』(毎日新聞社)等。しかし節目ごとにこぼれ落ちる事象が増えてきているように思われる。本書は時間の幅を1968年から1972年の5年間に絞っている。オイラにはその理由が全く分からない。ジャンルによってはより幅を広げて論じられているのだ。やはり1968年文化を論じる場合、1965年から1974年(昭和40年代)が相応しい。







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