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評者◆ベイベー関根
昭和は遠くなりにけり、特に子供にとっては。
ちびしかくちゃん 第一巻
さくらももこ
No.3335 ・ 2018年01月20日




■しまった、これがもう単行本になっていたとは! 不覚!
 というのはコレだよ、さくらももこ『ちびしかくちゃん』1巻。え、『ちびまる子ちゃん』じゃないの? という当たり前すぎるツッコミを入れる人はさすがにいないと思うけど、あの国民的ヒット作のセルフパロディ作なんだよな。
 しかし、『ちびまる子ちゃん』が始まってからもう30年以上経つのかー、時が流れるのは早いもんだぜ! 86年の連載開始直後から「『りぼん』で面白いマンガが始まった!」という熱い噂が流れ始め、実際に読んでみると、なんと自分より年下の人間が昔話をしているじゃないの! しかも、つかみもオチもうまいんで、驚いたねー。『ちびしかくちゃん』の方は、2015年に『グランドジャンプ』で始まった作品で、しかし単行本は「りぼんマスコットコミックス」から出ているってのがちょっと笑える(当然カバーもパロディ)。
 しか子は、『ちびまる子ちゃん』のまる子と同じ小学三年生。ちょっと違うのは顔が四角いところ。んで、「とってもドジで/いつも怒られるか/みんなの笑い物だよ」なんだって。
 最初の回では、学校に体操着と間違えてお父さんのパンツをもってきてしまい、それがみんなにバレてクラスの笑い者に。家に帰ると、今度は顔の四角いお父さんに怒られて(このうちの人々は、しか子同様みんな顔が四角いのだ!)、夕食ヌキを宣告される。ガタガタ震えながら泣いて詫びるしか子。これだけでもう、キツい~って感じ。
 第2回では、家族の顔の四角さを、丸尾くんならぬ下留尾(げるお)くんに「呪われた一家」と宣告されて、それだけでもショックなのに、親友?のたまちゃんな
らぬだまちゃんに延々と笑われ続けるという、なんともいたたまれない状況に。
 ほかにも『ちびまる子ちゃん』に出ていたようでちょっと違うキャラクターたちが、次々としか子を窮地に陥れる……という具合で、ほんわかほのぼのムードじゃなくて、世知辛い、というよりリアルでダークな話がてんこ盛りになっている感じ。まる子は明るくスコーンと抜けていて、友達にも恵まれていたけれど、しか子は要領が悪くて、何でもひっかぶってしまうタイプの子なんだよな。しかも、いつもそばにいるだまちゃんが、またヤな子なんだ! 自分より弱い子を笑い者にしたり、マウンティングしてきてさ~。『ちびまる子ちゃん』の舞台になっていた1974~75年くらいはまだ世の中もユルくて、抜け道もあったけど、今は確かにあちこちキツくなってきていて、その影響が子供の社会に直撃するとこうなるよなー。
 今のところ、しか子は「みんな私が悪いのよ~」みたいな「損な役回り」で止まっているけれど、これ、リアルだったらいじめられっ子まっしぐらか、めっちゃ卑屈な方向に行っちゃうだろうしなあ。う~ん、がんばれ、しか子!







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