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評者◆秋竜山
パンツあっての肉体美、の巻
No.3334 ・ 2018年01月13日




■「ニッポン再発見」倶楽部『日本は外国人にどう見られていたか――来日外国人による「ニッポン仰天観察記」』(知的生き方文庫、本体五九〇円)で、〈畳の生活――靴を脱ぎ正座!西洋と決定的に違う生活習慣の反応は?〉という項目がある。外国人が、靴を脱がずに畳の間に上がっていく。私の子供の頃、そんな映画の場面があり、立派なギャグにもなり大笑いしたものであった。これは外国との生活の中での習慣であって、もし日本人が外国へ行って外人宅に上がる時、そのつど履物を脱いでいたら、笑われたであろう。で、思い出したのは、私が子供の頃、正月などで新しい下駄や履物を買ってもらい家の中で履いて、履いたまま玄関を出ると、「そんなこと、するものじゃない」と、とがめられたものであった。履き物をまず玄関の土間に置いて、それから履いて玄関を出るものであるということであった。履物を脱がずに家の中へ上がるということを叱られるのはわかるが、履物を家の中で履いてそのまま外へ出るということは、なぜ駄目なのか。「そんなことは死んだ時にするもんだ」と、いわれた。そういえば、死人に、わらじを履かせて、家の中から外へ出すという風習があったから、きっとそのことをいったのだろう。
 〈現代の日本人の生活はかなり西洋化しているが、玄関で靴を脱ぐという作法はいまだに変わっていない。(略)しかし、幕末明治期に日本を訪れた西洋人は、この作法を理解するのに苦しんだ。西洋で靴を脱ぐのは、寝室などのごくプライベートな場に限られるが、日本では城中で将軍や大名に拝謁する際はもちろん、庶民の粗末な家に立ち寄るときでさえも、同じように靴を脱がなければならない。戸惑いを覚えるのも当然だった。〉(本書より)
 靴を脱ぐということは、どのような精神状態になるのか。つまり、素足になるということである。「猿の惑星」という映画が封切られた時、観て驚いたのは、惑星で進化した猿たちにとらえられた人間が素っ裸にされた。主演のアクション俳優で有名なチャールトン・ヘストンである。もちろんスーパー・アクション俳優であるから肉体美そのものである。たくましい体つきだ。ところが、あの世界の肉体美が猿たちにパンツをぬがされてしまった。日本人だったらフンドシである。パンツをぬいだチャールトン・ヘストンの肉体美もどこかへとんでしまい、ヘナヘナの弱々しい男の姿になってしまったのであった。その時、男の裸体と女の裸体の姿の違いをはじめてしらされる思いだった。たとえば、男のプロレスでもいい、格闘技がパンツもしないで、お互いにリングの上で試合をしたら、どのような光景をみることができるだろうか。若い頃、漁師時代、沖でいせいよく船の上で動き回っているが、パンツやフンドシを海水などでぬらしてしまうと、全身力が抜けてしまったものであった。考えてみると靴の中の靴下も雨でぬれてしまうと、気分が悪くなってしまうものである。そのようなことを、玄関で靴を脱がされた西洋人が、もしかすると同じような気分になってしまったのではなかろうか。なんて、想像してしまう。玄関で靴を脱がされるのも、パンツを脱がされるのも一緒のことであると思えてならないのである。







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