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評者◆秋竜山
「俺は笑ったぞ!!」という前置き、の巻
No.3333 ・ 2018年01月01日




■俺は怒ったぞ!! と、前置きして怒るヒトがいる。俺は笑ったぞ!! と、前置きして笑うヒトはいないだろう。そして、俺は泣くぞ!! と、いってから泣くヒトも見たことがない。「エーイ!! チキショーめ!! ゆるさん。俺は怒ったぞ!!」と、わめくようにいってから、モーレツに怒りだす。怒るという感情だけが、前もって口にしてから顔をまっかにして怒るのだろうか。そして、俺は笑ったぞ!! といってから笑うヒトはいないのはナゼなのか。そんなこと考えこともなかったが、備瀬哲弘『精神科医が教える「怒り」を消す技術』(集英社文庫、本体四六〇円)を、読んでいて、ギモンとなったのである。
 〈怒りの説明としてまず思いつくのは、驚き、喜こび、おそれ、嫌悪、悲しみ、楽しさ、不安などといった私たちのだれもが抱く感情の一つだということです。感情は、健康な人であればだれもが同じように抱くものです。〉(本書より)
 よく、「彼は、怒ることをしらない」なんて、いいかたをする。怒ったのを一度も見たことがないともいう。そして、怒らないのも限度がある!! なんていったりする。彼は怒りをしらない、いいヒトだ!! なんて、のもある。が、そういうヒトに対して、場合によっては、怒らないと、「馬鹿じゃなかろうか」なんて、思われたりする恐れもあったりするだろう。
 〈怒りは、人間だけが持つ特権的な感情ではありません。動物も怒ります。動物は攻撃を受けて生命的な危機に直面した際に、ときとして怒り、闘争する構えを示します。「ときとして」というのは、戦っても勝ち目がない場合には、闘争自体が生命的な危機につながりますから、その場合には動物は逃走を選択するのです。〉(本書より)
 よく、時代劇の映画とかテレビ・ドラマなどで、ケンカして負けがわかった時、その場を逃げ出すわけだが、その時の口にするセリフが決まっているようである。「クソーッ!! おぼえてやがれ」で、ある。このセリフを吐かない限り、逃げるわけにはいかないのか。逃げる時の一つの間というものなんだろうか。最後の最後に「すごんでみせる」としての捨てゼリフなのか。たとえば、無言で前置きのセリフもいわずに逃げ出すと、なんとも間がもたない。逃げるほうも、逃げられるほうも、「いったい、どーなったんだ」というお互いの気持の中での納得のようなものがないから、なんともあやふやな雰囲気になってしまうのだろう。「クソーッ!! おぼえてやがれ」は、逃げるほうとして、どーしてもいいたいのである。「俺は怒ったぞ!!」と、前置きしてから怒り出す感情と似ているように思える。怒りの感情をより大きく爆発させるために、口に出したいセリフではなかろうか。
 〈そもそも、「自分は正しい」という前提こそが、一方的な思い込みです。そのような視点で物事を捉えていると、「一般的によくない」とか、「非常識だ」とかと単純に受け止める機会が多くなります。そのため、怒りを感じやすくなるといえるでしょう。〉(本書より)
 たしかに、それはいえる。「私が悪かった」と、あやまりながら怒り出すヒトはいないだろう。いや、まてよ、そーいう時は、腹の中で怒っているかもしれない。







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