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評者◆添田馨
暗黒の時代から漆黒の世へ②――「安倍政権」とは何者なのか?
No.3330 ・ 2017年12月09日
■「安倍政権」の本質は“漆黒”である。野党の求めに応じて政府の提出した内部資料がほぼ全頁黒塗りだったように、“真実”の黒塗り、つまりこの“漆黒”こそが、現政権の醜怪な姿をもっともよく象徴する。
安倍晋三の言う「戦後レジームからの脱却」は対米従属の強化のことである。その最大の目的は自政権の維持にあり、それを保障する主体がアメリカの国家権力であるのはすでに周知である。しかし自らの権力の源泉がアメリカに由因している事実を、彼は黒く塗りつぶす。その上で「日本を取り戻す」という右派的スローガンにより、その改革的な政治姿勢ばかりを過度に演出する。 本来、戦前を志向するメンタリティには、わが国が“独立国”であった大日本帝国時代への強い郷愁が宿る。彼の祖父・岸信介が憲法改正に賭けた悲願には、敗戦国として著しく不当な関係(片務的)にあった日米の安全保障体制を、対等な関係(双務的)に持ち上げるという秘めた眼目があった。そこには東西冷戦構造のもとで、軍事力によるアメリカの覇権を自政権のバックボーンとして甘受しつつも、憲法を改正することで実質的な“独立”を裏で勝ちとるという彼なりの隠れた国家戦略があった。 しかし安倍が進める憲法改正は、日本の軍事機構がアメリカの戦争に一体関与できるようにすることが最大の目的であり、言い換えれば“独立”とは真逆の、対米従属をますます深める売国の道でしかない。そうする理由は、権力者としての自己保身こそが彼にとっては、すべてに勝る最優先事項だからである。 安倍は従って祖父である岸の遺志をなにひとつ受け継いではいない。自分が権力の座に居座り続けるためのもっとも安易な道をアメリカに求めたに過ぎない。 これらは見え透いた猿芝居であり、深刻な政治の戯画化をもたらした。なぜこうした事態が招来されたのか。理由は、ひとえに総理大臣という要職につく者として、彼があまりに空疎かつ矮小だからである。 (つづく) |
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