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評者◆ベイベー関根
「革命」といえば、今や自民党タームだけどな。
ライク ア ローリング ストーン
宮谷一彦
No.3330 ・ 2017年12月09日




■いやー、忙しくてバタバタしているうちに、もうすっかり秋やんか。いろいろネタは準備していたんだけど、どうもなあ、今見るとどれもたいしたことないんだよなあ。やめっか……。
 まあだけど、これだけはちょっとふれときたいなと思うものもあって、それが宮谷一彦『ライク ア ローリング ストーン』。しばらく前に、編集ミスが話題になってたやつね。
 もともとは1969年に『COM』に半年間連載された作品で、発表当時は「私マンガ」と評判を呼んだ、らしい! そして、何と今回が初の単行本化! というのも、これまでも話はあったものの、作者がなかなか首を縦に振らなかったから、らしい!
 主人公はマンガ家、これにいうまでもなく作者本人がダブらせてあるんだけど、これがまたヤんなっちゃうほどの二枚目。タバコを燻らせながらキザなセリフを呟いたり(「男はいつか出発するのさ/たったひとりでな/あばよ」)、スポーツカーを走らせたり、高校時代から付き合ってる女と、右翼の大物の娘(!)の女子高生の間で揺れ動いたりする……。これで23歳のころの作品(しかも描かれていることは、ほぼ事実)だっていうんだから、繰り返すけどヤんなっちゃうよ。マンガ表現の上でも、緻密な描写と大胆な転換などの斬新さは今見ても迫力十分。今読み返したとき、いろいろツッコみどころも目につくだろうけど、この作品が、発表から50年近くかかった上であれ、単に「歴史上の名作」というに止まらず、さまざまの裂け目をもった特異点として再び日の目を見たことはやはり寿ぐべきことだ。
 『フリースタイル』36号によれば、江口寿史は、宮谷一彦のカッコよさを説くいしかわじゅんに「ちょっとダサいじゃないですか」といってのけたそうだが、その是非は問わぬとして、この劇画的、というよりハードボイルド的「カッコよさ」の磁場が執筆当時これほどの強力さをもっていたとは、今からは信じがたいことに違いない。今は、自分を描くならダメ人間として描かなくてはならないという磁場の方が圧倒的に強いからなー。自分をカッコよく描くこと自体がダサいことになってるでしょ(その意味では、現在の方がいわゆる「私小説」には近いのかも)。もちろん、現在の磁場がもっている力もいつかは消え、その後にどんな磁場が生まれるのかはわからない。マンガで自分のことを描くこと自体ダサい、という時代になったりしてね、いやありえるな。
 さて、冒頭の編集ミスの話、第1話と第4話が入れ替わっていたことに気づいて、素早く適切に対処したフリースタイルはエライね、見上げたものだ。現状で「これが正しい!」と強弁されたら、そうかもと納得しかねないくらいのものではあるんだけど、やっぱりヘンだよね。一方で、ページが取り違えられたまま現在も刊行され続けている作品もあったりするから(つげ義春とかでも)油断は禁物だ!







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