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評者◆秋竜山
ハテナの大パニック、の巻
No.3327 ・ 2017年11月18日




■漫画は記号の絵画と、いってもいいだろう。漫画の人物の頭上に〈?〉マークが浮いている。この人物が、今、ハテナ? と、考えているところであると、誰もが思うはずだ。現実にこのようなことがありえることはない。ハテナ?印は、どこから飛び出て頭のてっぺんで浮いているのか。頭の中の脳からである。脳はハテナと思った時、ハテナ?印を頭の外へと飛び出させる。飛び出たハテナ?が、瞬間にどこかへ飛んでいってしまっては、なんの意味もない。相手にわからせるためにハテナ?印は頭のてっぺんにとどまって浮いているのである。竹内薫著、嵯峨野功一構成『教養バカ――わかりやすく説明できる人だけが生き残る』(SB新書、本体八〇〇円)では、その事情をうまく説明してくれている。
 〈つなぎの言葉で、相手が頭の中に絵を描くため……(略)〉(本書より)
 と、あるがつまり、言葉とは頭の中で描かれた絵であって、口からその絵を言葉にして発する。その発したものを、受け手は自分の頭の中で絵を構築して、意味を感じとる。脳内にハテナを作る時は、脳内にハテナ(?)マークを描くことであり、このハテナ(?)マークを脳内から頭上に飛び出させて、浮かび上がらせる。それが漫画だ!! と、いうことだ。たとえば、ハートのマークなどが頭上に浮かび上がっている時は、相手に対しての自分の恋心の表現である。このハート印も記号であり絵である。美術館のカベにかかげてある芸術作品の人物画の頭上にハテナ(?)印を描きいれたとしたら、その作品は、すべてが立派な漫画作品になってしまうだろう(さあ、大さわぎ)。
 昔、大先輩の漫画家が、大観の富士山の絵に、「俺は日本一の山だ」と、〈ふきだし〉を書きいれたら、漫画になってしまう、というようなことを本に書いていた。富士山の頂上にハテナ(?)印を浮かびあがらせたら、これも漫画だろう。
 〈ハテナ展開で気をつけなければいけないのは、相手に浮かばせるハテナの数です。ハテナは一つ。2つ目のハテナを出すときは、前のハテナを解消してからにしましょう。相手の頭の中がハテナ×ハテナ×ハテナになってしまうと、こちらの説明が大変です。張りすぎた伏線はすべて回収しないと消化不良に。最終的に「こいつは何いっているんだろう?」と思われたら最悪です。〉(本書より)
 頭のてっぺんに浮かびあがらせる〈?〉は一つにすること。もし沢山の〈?〉がついていたら、「この〈?〉は、何を意味するハテナです」「そして、このハテナは……」と〈?〉の大パニックになってしまうだろう。
 漫画で頭のてっぺんに浮かばせる古典として、「パッ」と明かりのついた電球がある。「アッ!! ひらめいた」などという時によく使う。電球だからエジソンが最初に頭のてっぺんでひらめかせたのか知らないが、電球がない時は、ローソクだったんだろうか。
 〈文章は短いほうが、テンポがよくなり、次の文にいくときに「間」をとることができます。伝える相手が「間」を利用して、頭の中で「絵」を描いてくれます。〉(本書より)
 「間」がないと頭の中に絵を描くヒマがない。ということだ。







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