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評者◆添田馨
暗黒の時代から漆黒の世へ①――二〇一七年衆議院選挙
No.3327 ・ 2017年11月18日




■衆議院選挙が終わった。自公圧勝の文字がメディアに踊った。だが、私は何故かぜんぜん負けた気がしない。獲得議席数だけを見れば、確かに野党共闘は敗北したように見える。しかし、そんな表層的な比較論では捉えきれないもっとずっと重要な政治の胎動を、この選挙は間違いなく私たちにもたらしたと思うからだ。
 小池・希望の党に民進党が合流するという前原の独断的謀叛は、枝野による孤独な決起を後押しした形となり立憲民主党の誕生につながった。このことの意味の重さは、自公圧勝などという数字上の勝ち負けなどをはるかに凌駕して余りある。これまでも待望されながら党内事情で実現するには至らなかった民進党内のリベラル勢力の結集が、ようやく政党政治の最前線で公式に船出を果たしたのである。
 2015年夏の国会前での安保法制に反対する抗議行動の際、枝野をはじめ何人もの民進党議員が参集して応援の演説をし、また彼等も国会審議の模様を私たちに伝えるなどして逆に支援を呼びかけたりと、相互の信頼関係はあのときから始まっていた。今回、立憲民主党躍進の原動力となったSNS戦略を担ったのは、あのとき行動を共にした元SEALDs関係者のチームだったと聞く。
 “spontaneous action(自然発生的行動)”という言葉が、いま私の脳裏に浮かぶ。新党結成を枝野に決心させたのは「#枝野立て」のハッシュタグによる多くの人々の声だった。改憲右派ではない、立憲リベラル派の受け皿づくりを枝野幸男に求める有権者の声はこうして“spontaneously(自然発生的)”に起こり、そして結党後における選挙戦も多くは自発的なボランティアの支援活動がこれを支えた。
 市民一人ひとりの声が数多く集積され、それが一人の政治家を動かし新たなリベラル政党を実際に産むというようなダイナミズムは、わが国の憲政史上でも初めての経験だ。これが現実の深層で起こった大きな勝利でなくて何であろう。例えそれが暗黒の時代を耐え、改憲勢力が3分の2を超えた漆黒の世であったとしても。――つづく







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