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評者◆sumiko
死体鑑定医という職業を知ることができる1冊
死体鑑定医の告白
上野正彦
No.3325 ・ 2017年11月04日




■テレビを見ない私は、残念ながら上野氏の存在をこの本を読んで初めて知った。主な著書として「死体は語る」があるようだが私は読んだことがない(是非、機会があれば読んでみたい)。また、死体鑑定医という職業の存在もこの本で初めて知り衝撃的だった。
 人間の死……病気だけではなく、自殺なのか? 他殺なのか? さまざまな死があるんですね。そして、人間の死にはストーリーがあることをこの本を読んで感じました。
 例えば、自殺なのに事故を装った保険金詐欺。事故死なのに、病院側は自殺と断定した死など上野氏が再鑑定を依頼された事件九つがこの本で紹介されている。どれも大変興味深いものだった。
 二万体の死体を検死した経験のある上野氏によれば「死体は語る」のだそうだ。死体の声なき声に耳を傾けてきたとおっしゃる上野氏。
 そんな上野氏が、死体ではなく生きている人を再鑑定した経験もこの本で語られている。お寺の住職さんが保険金目当てに火災事故を装ったのだ。
 生きている人間であれば本人に真偽を聞けばいい。しかし、生きている人間は死体と違って嘘をつくのですね。
 死体は嘘をつかないが、生きている人間の言葉には嘘がある。これはなかなか興味深いストーリーだった。
 弁護士の有利になる鑑定をする法医学者もいるということがこの本に書いてある。これは恐ろしいことですね。しかし、上野氏は常に中立な立場で鑑定医として死体と向き合ってきたという。
 上野氏の言葉で印象的だった言葉を引用したい。
私は読者からサインを頼まれると「生」と書くようにしている。多くの死を見てきたので、死を通していかに生きるべきかを知る、その思いを込めての「生」(いきる)である。肉体は滅びても親しい人びととは心は通じ合っている。心の中でその人は生きている。
 私自身も私が二五歳の時に大好きな父を亡くしている。しかし、今でも私の心の中で生き続けている。
 上野氏も奥様とお嬢様、そして愛犬を亡くしている。しかし、上野氏の中では三人は亡くなっていない。今も会話し元気に生きているという。分かる気がします。
 最後に上野氏は、死体監察医を目指す若者が増えることを願っている。医学部に進学しても法医学を志す学生は減っているらしい。是非、この本を読んで法医学を志す人、あるいは法医学に近い弁護士さんが増えることを願っている。
 是非、この本を若い人たち、できれば高校生たちに読んでほしいと感じた。







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