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評者◆伊達政保
観る者の感性を鳥肌が立つようにざわめかせる作品群――山村俊雄個展「原基‐原器」と山村音楽会
No.3325 ・ 2017年11月04日




■この9月、東京下北沢ギャラリ一・アレイとアレイホールで山村俊雄個展「原基‐原器」が13日間にわたり開催された。彼の作品はこれまで舞台美術や映画美術などの形でしか見たことがなく、本格的に絵画を観るのは初めてだ。MRIの断面像のような精密画から、波頭を思わせる吹き流しや幻雲のような暈しの技法を使った大作まで、観る者の感性を鳥肌が立つようにざわめかせる作品群だった。
 山村氏とは今まで幾度もジャズや演劇など同じ現場で出会っている。そういや翠羅臼と大久保鷹のパレスチナ・キャラバン「アザリアのピノッキオ」パレスチナ公演に彼は舞台美術スタッフとして参加していた。彼をよく知ることになったのは足立正生監督『断食芸人』の撮影過程でだった。映画の劇中画や最後に出て来る土偶も彼の製作だし、ほとんど足立組スタッフのようだった。以後、2015年に12年ぶりに地元栃木で個展を開き、今年は東京で開催することになったのだ。
 今回なんと山村氏の過去のプロフィールを初めて知り驚いた。前衛芸術九州派の流れを汲み「絵を描かない画家」と言われ北九州の音楽シーンでは伝説の人物であった、故・新開一愛氏が師匠筋に当たるという。昔といっても70年代半ば、山下洋輔氏たちから新開氏の破天荒なエピソードを聞いた覚えがあったのだ。
 この個展の期間中、山村音楽会と題して音楽ライブが毎夜アレイホールで行われた。絵画の個展としては前代未聞の企画だ。15年に栃木の個展でも演奏した、不破大輔cbのプロデュースにより、山下洋輔ピアノ・ソロ、三上寛、玉井夕海voと不破トリオ、不破カルテット、大森林(大沼志朗、森順二、林栄一)、ゲンゴ(山口コーイチpf、不破ら弦4人)ゲス卜片山広明、渋谷毅ピアノ・ソロ、川下直広カルテット、等の錚々たるジャズ・ミュージシャンたちが出演する素晴らしいプログラムが組まれた。また舞踏の若林淳がそれらの演奏に絡んで踊った。これはまるで小規模のジャズ・フェスティバル、いくらオイラ小田急沿線で下北沢が近いとはいえ、さすがに全部聞きには行けず6日しか通うことができなかった。
 山村音楽会挨拶文によれば、美術仲間は皆無であって、表現世界の取っ掛かりは音楽、特にフリージャズの人たちとの出会いが大きく作用しており、また新開氏の紹介で山下氏や三上氏との出会いがあったという。なるほどだから不破氏はこういうラインナップを組んだのか。オープニング・パーティーには足立正生監督や映画プロデューサーの小野沢稔彦氏、演劇からは翠羅臼氏、大久保鷹氏などこれまた錚々たるメンバーが顔を揃え、山村氏の人脈の広さを窺えるものだった。







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