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評者◆伊達政保
日本の軍隊はそういうものです、という血涙下る証言――NHKの骨太のドキュメンタリー三部作「731部隊」「樺太地上戦」「インパール」
No.3324 ・ 2017年10月28日




■8月15日を前後し毎年、戦争に関するテレビ番組が放送されるが、今年NHKは気合いが入っていた。総合TVのNHKスぺシャルで、12日「本土空襲・全記録」、13日「731部隊の真実‐‐エリー卜医学者と人体実験」、14日「樺太地上戦・終戦後7日間の悲劇」、15日「戦慄の記録・インパール」、そして20日「戦後ゼロ年・東京ブラックホール1945‐1946」が放映された。それらは新たに発掘された映像、音声、資料、証言を基に構成されていた。ドキュメンタリー映像に主人公を合成しドラマ仕立てにした「戦後ゼロ年」、他は骨太のドキュメンタリー作品となっており、中でも「731部隊」「樺太地上戦」「インパール」は三部作と言えるほど、日本軍と戦争のあり様、その責任を追及したものとなっていた。 
 三部作のうち「731部隊」で今回発掘された終戦直後のハバロフスク裁判での音源は、隊員により人体実験の様子が克明に語られていた。また学術資料により京大、東大などの医学部の教授たちの命で、医師たちが組織的に関与していたことも明らかにされた。戦後は皆囗を拭ってしまったのだ。「樺太地上戦」は終戦後、札幌師団司令部の死守命令より始まる。上陸占領しようとするソ連軍に対する先制攻撃により開始された。現地軍により全民間人男女少年による国民義勇隊が組織され、竹槍などの武器により戦闘に及ぶも、民間人6千人の犠牲者を出し7日後に大本営の命令により降伏。もし本土決戦が行われていたとしたら、同じ事が起きたことは問違いない。
 オイラにとって白眉はやはり「戦慄の記録・インパ一ル」だ。他の二本は45分前後だが、73分の番組である。初めて許可された現地取材と、もはや90歳を超えてしまった生還者の証言により、作戦の実態が明らかとなっていく。敵戦力の実態と兵站を無視した無謀な作戦。牟田口司令部付の斎藤少尉の日誌や手記により司令部で、(自軍の兵を)5千人殺せば(敵陣を)取れる、など生々しい会話が記録されていた。全軍9万人中6万人が死亡、資料分析によりその6割が病死、餓死、証言により自殺も多く、人肉食も行われた。また死者の6割は作戦中止後の撤退中に生じた。屍が累々と続く白骨街道である。撤退後、大本営も現地司令官も作戦失敗の責任を下に上に擦り付け、だれも責任を取らなかった。戦後も牟田口司令官は自分に責任の無いことを録音に残し強調している。司令部に置き去りにされて捕虜となり、生還した斎藤少尉は現在も存命で、死んだのはみな兵隊・軍属で、将校は生きて返ってきた、日本の軍隊はそういうものです、という血涙下る証言には愕然とし、頭が下がる思いがした。







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