書評/新聞記事 検索  図書新聞は、毎週土曜日書店発売、定期購読も承ります

【重要なお知らせ】お問い合わせフォーム故障中につき、直接メール(koudoku@toshoshimbun.com)かお電話にてバックナンバー・定期購読の御注文をお願い致します。

評者◆秋竜山
宇宙に一人ぼっち、の巻
No.3322 ・ 2017年10月14日




■夜道を歩いていても、夜空というものがあるということなど思ったこともない。夜空に星というものがあるということも。それが、今年の夏、夜空を見上げ、まるで星というものを大発見したような気分で、一夜を星を眺めてすごす計画をたてた。ジャレド・ダイアモンド著、レベッカ・ステフォフ編著、秋山勝訳『若い読者のための 第三のチンパンジー――人間という動物の進化と未来』(草思社文庫、本体八五〇円)に、 〈今度、キャンプに出かける機会があるときには、町の灯りの届かない、よく晴れた夜の空を見上げてほしい、どれだけたくさんの星があるのかがわかるはずだ。(略)数え切れないほどの数の星だが、〉(本書より)
 今の時代、夜空を見上げて、数え切れない星を目撃することは不可能である。五つ六つぐらいなら星のようなものが光っている。と、いうことは星というものは私たちから姿を消してしまったということだ。しかし、田舎の夜空には、それなりに星を見ることができる。星を見るといっても、空にチカチカ光があるだけのことだ。そのチカチカを見て、「アッ!! 星が輝いている」と、思っただけで終わってしまうだけだ。星を見るということはその光に対して、いかに想像力が働くかである。オシャカ様は、星を見ていて、「アッ!! 今、私は光った」と、いってその星と一体化して悟りをひらいて、生きながらにして仏になれたという。それは凡人のなせるわざではない。凡人がそんなことをいったら、「お前は馬鹿か」で、終わってしまうだろう。私のその夜における星の見物は、田舎にある小さな畑のド真ん中にゴザを敷き、その上に蒲団を持ち込み、つまり、その蒲団の中へ入って、亀のように首だけ出し星を眺めるといったものである。
 〈私たちの宇宙には何十億という数の銀河があり、さらにそれぞれの銀河には何十億、あるいは何兆という数の量が存在する。現在知られているこうした星の多くは、周囲を回転している惑星をしたがえている。(略)この宇宙のなかで、唯一人類だけが特別な存在ということがありうるだろうか。宇宙の向こう側から私たちを見返している、私たちと同じような文明をもつ知的な存在がいったいどれだけいるのだろうか。〉(本書より)
 そんなことを書いたSF小説がいっぱいある。私は本書で面白いと思ったのは〈一人ぼっちの宇宙〉と、いうとらえかたである。私は蒲団の中から夜空を眺めていると、夜空というより、宇宙を眺めているという気分がしてきた。宇宙にポツンと自分がこうしているという気分である。すると今度は、ある恐怖というようなものがおそいかかった。それは私があお向けになって夜空を眺めている上空に突然UFOが飛んできて、よくマンガなどにあるUFOの下部にある丸い穴の中へ吸いこまれてしまうのではないか。そして、どこか知らない星へと連れていかれてしまうのではないだろうか。その時、私は蒲団の中へもぐり込んだ。蒲団の中へ身をかくせば宇宙人に気づかれないだろう。そんなマンガみたいな気がしたのであった。蒲団の中で何かに似ていると思った。あの時「ただちに地下へもぐってください」の町内放送である。地下などどこにもないのに地下へもぐれとはどういうことだ。私は思った。あの場合、「ただちに蒲団の中へもぐってください」ではなかったろうか。だったら話はわかるというものだ。







リンクサイト
サイト限定連載

図書新聞出版
  最新刊
『新宿センチメンタル・ジャーニー』
『山・自然探究――紀行・エッセイ・評論集』
『【新版】クリストとジャンヌ=クロード ライフ=ワークス=プロジェクト』
書店別 週間ベストセラーズ
■東京■東京堂書店様調べ
1位 マチズモを削り取れ
(武田砂鉄)
2位 喫茶店で松本隆さんから聞いたこと
(山下賢二)
3位 古くて素敵なクラシック・レコードたち
(村上春樹)
■新潟■萬松堂様調べ
1位 老いる意味
(森村誠一)
2位 老いの福袋
(樋口恵子)
3位 もうだまされない
新型コロナの大誤解
(西村秀一)

取扱い書店企業概要プライバシーポリシー利用規約