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評者◆秋竜山
モグラになるしかないのか、の巻
No.3320 ・ 2017年09月23日




■生きているということは経験するということである。日本の上空を弾道ミサイルが飛ぶ。その内に、先端に原子爆弾が取りつけられることになるらしい。正しく怖がることであるというようだが、正しくても間違っていても、怖がるということは一緒である。テレビのニュース番組に映し出された、「キケンですから、すぐ地下へもぐってください」と、町内の放送が流されたと、いう。画面のインタビューに答えている御婦人が、地下へもぐれといわれても、いったいどこの地下へもぐればいいんでしょうか!? 地下など、どこにもない。地下がないところの地下へもぐれというのか。まさかヒトをモグラと間違えているのではなかろうか。モグラであったら話はわかる。いきなりいわれて、スコップで地面をほって、自分がはいれる程の穴をどれほどほれるか。マンガは笑うためにある。しかし、このようなマンガがあったとしても笑えるわけがない。やっぱりモグラになるしかないのではなかろうか。
 この前、川田順造『〈運ぶヒト〉の人類学』(本体七二〇円、岩波新書)を取り上げ、そこに述べられているモグラについてであるが、これは非常に参考になるような、ならないような気がしたから、あえて又、取り上げさせていただくことにした。本書では別の意味でのモグラであるが、今の私にしてみれば、日本人はモグラになるべきだと主張したいのである。この前の号と重複するけど、
 〈大爬虫類が荒れまわったジュラ紀(約二億年前~一億四〇〇〇万年前)には、地下生活でその難をしのいでいた「原モグラ」は、大爬虫類の絶滅後、地上に出てみたものの、今度は同様に地下から出て地上生活をはじめた、繁殖力旺盛で攻撃的なネズミの類の、猛威にさらされることになった。〉〈そして原モグラの一部はまた地下生活に戻って今のモグラの先祖になった。〉(本書より)
 と、いうのである。原モグラというのものをはじめて知ったのであるが、地の中から外へ出たり入ったりしたようだ。弱いものは結局はそうせざるをえないということである。日本人は生きのびるために、地の中から外へ出たり入ったりする運命にあるような気がしてくる。核シェルターなどと格好いいようなことをいっているが、モグラの行動とまったくかわらないのではなかろうか。科学というものは人類を進歩させるというより退化させるものであるように思える。人類の結末はモグラになることであったとは夢にも思わなかっただろう。
 〈地下生活では、視覚や聴覚よりは嗅覚が生きる頼りになる。(略)少し古くなった食べ物が、まだ食べられるか知りたいとき、反射的に匂いを嗅ぐ。そんなとき私は、大昔、原モグラだったころの記憶が甦ったような気がして、可笑しくなる。〉(本書より)
 そこで又、別のことが頭に浮かんできてしまった。東京の魚市場の一件でもある。地下のよごれは生物が住める状況ではないらしい。つまり、モグラに限らず地下生活者の住めるところではないらしい。地上も地下も住むところではないということだ。







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