書評/新聞記事 検索  図書新聞は、毎週土曜日書店発売、定期購読も承ります

【重要なお知らせ】お問い合わせフォーム故障中につき、直接メール(koudoku@toshoshimbun.com)かお電話にてバックナンバー・定期購読の御注文をお願い致します。

評者◆添田馨
象徴と民心⑫――象徴としての“アベシンゾー”④
No.3319 ・ 2017年09月16日




■支持率急落の潮目となった7月1日、東京・秋葉原での安倍首相による都議選の応援演説の模様について触れておく。首相が演説した時にだけ激しい「帰れ!」コールが起こり、最初のうちはそれほどでもなかったように書いている記事を目にしたからである。完全な間違いである。演説会の開始直前から「安倍は辞めろ!」のコールはすでに始まっていた。それがずっと途切れることなく続き、首相登場後には「帰れ、帰れ」の怒濤のようなコールへと盛り上がっていった。これが真相である。私は現場に立ち会っていたから、証言できる。
 すっかり有名になってしまった「こんな人たちに負けるわけにはいかない」発言も、聴衆からのあまりにも激しい「帰れ!」の声に、首相がついにブチギレて発した捨て台詞のようだった。この一言で彼の負けは決まった。自民支持者と思われる人々から弱々しい拍手が一瞬起こったが、その波もすぐにかき消された。
 “アベシンゾー”にとって秋葉原は象徴的な場所である。自民党が政権に返り咲いた2012年12月の衆院選で、期間最終日15日夜の演説会場として選ばれたのがここ秋葉原の西側駅前広場だった。広場は日の丸を手にした約1万人の聴衆で埋め尽くされた。翌日の投開票で民主党は惨敗。自民党が政権奪取に成功する。その勢いはまるで、前日の秋葉原の熱気が、そのまま圧倒的な得票数に結実したかのような錯覚を彼に与えたに違いない。秋葉原は、かくして彼自身の政権返り咲きの“聖地”と化したのである。
 7月1日には「安倍やめろ!」と大書きされた巨大な横断幕も登場した。どこかで見覚えがあった。そう、2015年8月30日の国会前での、安保関連法案に対する大規模な抗議行動の際に忽然と現れたのと、それはまったく同じものだったのだ。この象徴連関はふたつのことを私たちに告げていた。時と場所は違っても戦いの相手は一貫して“アベシンゾー”であること。そして彼の“聖地”はすでに存在しないことをである。
(続く)







リンクサイト
サイト限定連載

図書新聞出版
  最新刊
『新宿センチメンタル・ジャーニー』
『山・自然探究――紀行・エッセイ・評論集』
『【新版】クリストとジャンヌ=クロード ライフ=ワークス=プロジェクト』
書店別 週間ベストセラーズ
■東京■東京堂書店様調べ
1位 マチズモを削り取れ
(武田砂鉄)
2位 喫茶店で松本隆さんから聞いたこと
(山下賢二)
3位 古くて素敵なクラシック・レコードたち
(村上春樹)
■新潟■萬松堂様調べ
1位 老いる意味
(森村誠一)
2位 老いの福袋
(樋口恵子)
3位 もうだまされない
新型コロナの大誤解
(西村秀一)

取扱い書店企業概要プライバシーポリシー利用規約