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評者◆ベイベー関根
まだ熱いプロレス魂をもつオッサンたちに。
力道山プロレス地獄変――木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか~最終章~ 上・下
漫画=原田久仁信、原作=増田俊也
No.3315 ・ 2017年08月12日




■またちょっとグチらせてほしいんだけどさー、こないだケン月影が作画を担当してる『七人の侍』を買ったんだよ。ケン月影はいつか取り上げないとなあと思っていて、でも今やってる『荷風になりたい』ってのが、まあしょうもないじゃない(苦笑)。そこに『七人の侍』。帯には「黒澤映画の傑作/完全劇画化!!」と謳ってるんで、へえ、そんな企画アリなんだ、そりゃスゴいなと思って買ってみたらさ、1970年の作品の復刻なんだぜ! しかも、そんなこと表に何も書いてないの! 当然ビニールもかかってるから中もすぐに確認できないしさ(頼めば剥がしてくれますよっていう反論があることはわかってるよ!)、ちょっとこれはなんとかしてくれよ、宝島社さんよ!
 というわけで、今回はそういうオッサン狙いの作品を取り上げるぜ! 画=原田久仁信、作=増田俊也の『力道山 プロレス地獄変 木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか~最終章~』上下だ! サブタイトルでおわかりのとおり、これは刊行当時大評判を呼びベストセラーとなった、増田俊也『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』のマンガ化だ。もともとは2013年から『週刊大衆』で『KIMURA』として始まった作品で、内容にも若干の変更があるし、作画の原田久仁信は梶原一騎原作の『プロレススーパースター列伝』『男の星座』(そしてもちろん『プロレス地獄変』!)の作画を担当していたということもあって、梶原リスペクトの側面も強く出ているな。
 木村政彦は、現在でも史上最強と呼ばれる伝説の柔道家。全日本選手権13年連続保持、1940年の天覧試合で優勝、アマ時代には15年間負け知らず。プロになってからも、エリオ・グレイシー(ヒクソンの父)に唯一土をつけるという圧倒的な実力の持ち主だったが、プロレスに転向すると、力道山と組んで力道山の引き立て役を演ずるようになる。そのことに不満を感じた木村は、1954年12月22日、力道山と「昭和の巌流島」と呼ばれる決戦に臨む。実は、この試合すら事前に引き分けとする取り決めがなされていたにもかかわらず、力道山はそれを無視し木村をKO、この顛末は「プロレス史上最大の謎」とされている。『力道山 プロレス地獄変』は、この木村と力道山の確執に的を絞って描かれていて、キャラ作りが、木村がいわゆる憎めないヤツ、力道山が日本にプロレスを根づかせようと奮闘するカタブツ、とちょっと単純化されてる気もするけれども、まあやっぱりスゴい迫力ですわ。マンガにおいては、闘いとはしばしば(というか、ほぼ)ことばの闘い、思想の闘いとして描かれるもんだけど、この作品もそれをみごとに表していると思うな! 同時に、「プロレス」を捨てられない男たちの生きざまそのものを表してもいるように思うんだけど、どうじゃろね?







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