書評/新聞記事 検索  図書新聞は、毎週土曜日書店発売、定期購読も承ります

【重要なお知らせ】お問い合わせフォーム故障中につき、直接メール(koudoku@toshoshimbun.com)かお電話にてバックナンバー・定期購読の御注文をお願い致します。

評者◆添田馨
象徴と民心⑪――象徴としての〝アベシンゾー〟③
No.3315 ・ 2017年08月12日




■安倍政権のやることがすべて悪いわけではないとの擁護する意見もある。だが、私はそれは違うと思う。安倍晋三という個人を攻撃しているのではないのである。“アベシンゾー”という権力主体を完全否定すべきだと言っているのだ。
 成功したクーデターとは政治権力の奪取を言うが、安倍政権の進めるクーデターは政治権力の“窃取”つまり泥棒行為である。泥棒行為はすでにそれ自体が悪であり、部分的に正しいなどということはあり得ない。つまり、完全否定の対象でしかないのである。
 例えば「戦後レジームからの脱却」というスローガンの中身は、現在の日本国の体制転覆のことだ。だが、それを表立っては言わない。経済発展という餌で国民を籠絡しながら、世論誘導を裏の最重要ミッションにして、選挙をコントロールし多数派を形成するのが彼等の戦術だ。議会、行政、司法などいわば現体制全体が彼等の“窃取”の対象になるのであり、そこで必然的に派生する悪は“巨悪”となる。
 外見上は民主主義に則った議会政治を演出する。だが、審議されるべき事案はすでに密室で決定済なのだ。明察な批判者の首尾一貫した検証に、それは到底耐えうるものではない。この二枚舌構造が国会での〈嘘〉の使用を常態化させる。例えば法案でも部分ではなくその全体を〈嘘〉で固めるのである。総理夫妻の疑惑追及などにおいては特にそれが顕著に現れる。
 〈嘘〉の常態化は、政権内部はもとより官僚の中にまで自己保身型“嘘つき”を量産する。誰にでも分かるような〈嘘〉を、高級官僚が国会で平気で弁じたてる。彼等は倫理や正義の側には立とうとしない。最後まで嘘をつき通して〝巨悪〟に加担する。安倍政権の〝巨悪〟を支えているのがこうした“凡庸な悪人”たちの〈嘘〉の集合なのだ。
 「鼠窃狗偸」という言葉がある。鼠や犬のようにこそこそと物を盗むことを言う。彼等は自分たちが築き上げた精華をそうやって自ら盗み続けているのである。
(続く)







リンクサイト
サイト限定連載

図書新聞出版
  最新刊
『新宿センチメンタル・ジャーニー』
『山・自然探究――紀行・エッセイ・評論集』
『【新版】クリストとジャンヌ=クロード ライフ=ワークス=プロジェクト』
書店別 週間ベストセラーズ
■東京■東京堂書店様調べ
1位 マチズモを削り取れ
(武田砂鉄)
2位 喫茶店で松本隆さんから聞いたこと
(山下賢二)
3位 古くて素敵なクラシック・レコードたち
(村上春樹)
■新潟■萬松堂様調べ
1位 老いる意味
(森村誠一)
2位 老いの福袋
(樋口恵子)
3位 もうだまされない
新型コロナの大誤解
(西村秀一)

取扱い書店企業概要プライバシーポリシー利用規約