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評者◆編集部
こどもの本棚
No.3313 ・ 2017年07月29日




■コウノトリってどんな鳥?
▼コウノトリのコウちゃん ▼かこさとし さく
 コウノトリって、いったいどんな鳥なんだろう。タンチョウズルとも、カモともちがう。体は白く、翼の先が黒く、足と目の周りが赤い。サギやトキと同じ仲間で、日本の特別天然記念物に指定されている鳥です。主にロシアと中国の国境地域、アムール川周辺で子どもを育て、冬になると中国東南部や日本にわたってきます。翼を広げた長さは二メートルほどで、高い木の上などに巣を作ります。
 この本の物語は、日本で生まれたコウノトリのコウちゃんのお話です。静かな村でのこと。村人たちが立てた高い柱の上に、コウノトリのつがいが巣を作り、卵を三つ産みました。そして生まれたのがコウちゃん、ゼンちゃん、タケちゃんです。三羽はぐんぐんと育ち、やがて巣から飛び出し、他のコウノトリとも仲よしになりました。
 そんなある日のこと。嵐がやってきて、コウちゃんたちが生まれ育った巣が飛ばされてしまったのです。がっかりしていると、村の人たちがまた巣を元に戻してくれました。嬉しくなって、みんなでコウノトリ・ダンス! コウノトリと人間がともに楽しく暮らす世界への願いが込められたお話です。(2・25刊、25cm×19cm三二頁・本体一二〇〇円・小峰書店)


■長く読みつがれる真実の恋の物語
▼美女と野獣 ▼ボーモン夫人 作/石井睦美 編訳/Nardack 絵/坪田信貴 監修
 究極のラブストーリーを描いて、映画にもなったフランスの名作が、オールカラー版の絵物語でよみがえりました。「100年後も読まれる名作」の第三弾です。
 お金持ちの商人の娘ベルは、とてもやさしい美女なのですが、パーティーが大の苦手で、本ばかり読んでいて、恋にも興味がない、風変わりな女の子と思われがちで、いつも一人ぼっちです。
 そんなある日のこと、不幸がベルの一家を襲います。お父さんの貿易船が沈んで、一晩で貧乏になってしまったのです。田舎で貧乏暮らしをしなければならなくなると聞いて、娘たちはイヤと反対します。お父さんはせめてベルを喜ばせようと、魔法の城のバラを盗んで、城主の野獣を激怒させてしまいました。野獣はお父さんに、ベルを連れてくるよう命じます。こうして美女ベルと野獣は出会うことになるのです。
 この物語が長く読みつがれているのは、想像力が豊かで、人と違うことを恐れない勇敢さをもつベルが、野獣の絶望や孤独、そして心の奥底にある優しさを感じることができるからこそではないかと、編訳者の石井さんはいいます。
 『美女と野獣』は、同じ苦しみを抱いた美女と野獣が心から愛し合う、「真実の恋の物語」(訳者)です。この本はカラーの絵が豊富で、物語を読みとくポイントも解説されています。夏の夜の読書にふさわしい一冊です。(7・21刊、A5判一四八頁・本体八八〇円・KADOKAWA)


■町全体の未来を「みどり」にする
▼みどりの町をつくろう――災害をのりこえて 未来をめざす ▼アラン ドラモンド さく/まつむら ゆりこ やく
 アメリカのカンザス州にある小さな町、グリーンズバーグ。この絵本の舞台となる町です。ある日、グリーンズバーグは、ものすごく大きな竜巻に襲われました。
 二・四キロメートル四方の大きさの暴風をともない、時速三〇〇キロメートルで近づいています! たいへん危険です、すみやかにシェルターに避難してください! 町に警報が響き渡ります。
 たった九分の竜巻で町はめちゃめちゃになりました。家も吹き飛ばされて、一一人が亡くなりました。まるで大きな爆弾が落とされたみたいだったといいます。
 人びとは絶望に駆られました。「もうグリーンズバーグにいたって、どうしようもないな」と思う人も出てきました。瓦礫で覆われた町を、これからどうしていけばいいのか。未来がないと、多くの人が途方にくれました。
 でも、そんななかから、新しい町づくりに取り組む動きも出てきます。町をどういうふうにつくりなおすか、話し合いが続きました。そして、自然のめぐみをいかして町全体を「みどり」にする案が生まれました。
 こうして「みどり」について考え、町の未来をとりもどす動きが始まりました。自然とともに暮らすこと、「みどり」の復興をテーマにした一冊です。(2・10刊、26cm×26cm三六頁・本体一四〇〇円・福音館書店)


■夏の終わりの不安な気分
▼ガルマンの夏 ▼スティアン・ホーレ 絵・文/小柳隆之 訳
 作者のスティアン・ホーレは、ノルウェーのオスロ在住の絵本作家で、この本は一〇年前に彼が長男のために書いた作品です。
 夏休みの最後の日って、名残惜しかったり、宿題が終わっていないと焦ったり、明日からの新学期にブルーになったり、夏の終わりを感じて寂しくなったり、いろいろな思いがよぎりますよね。
 この本の主人公の少年の名はガルマン。彼も夏休み最後の日、明日の始業式のことを思って不安でいっぱいになりました。そこで、パパやママや年寄りのおばさんたちに訊いてみたんです。「不安なことはある?」って。
 ガルマンの歯は、まだ一本もぐらついていないけれど、友だちは乳歯が抜けて、生え変わりつつあります。おばあさんたちの歯は、一本残らず抜けてしまって、総入れ歯です。ガルマンはおばあさんに、いろいろ質問します。そうしてママに、パパに、どんどん質問し続けていくのです。ガルマンの不安は、いったいどうなっていくのでしょうか。
 子ども心の不安と楽しさに満ちたお話が続く、夏の終わりの気分にぴったりの絵本です。印象的なイラストとデザインが物語世界をゆたかに彩って、ガルマンの歩みに思わず引き込まれてしまいます。(5・31刊、A4判四八頁・本体二〇〇〇円・三元社)


■戦争の時代のちいさな物語
▼靴屋のタスケさん ▼角野栄子・作/森環・絵
 これは、1942年の初夏、戦争の時代のおはなしです。おもて通りの時計屋さんがなくなって、お店がからっぽになりました。近所に住む小学一年生の女の子は、そこにつぎはどんなお店がはいるのか楽しみで、毎日通っています。ある日、そこに「タスケ靴店」という看板がつきました。ガラス戸に顔をくっつけて中をのぞきこんでいると、タスケさんが「おいで」と中に入れてくれました。それからタスケさんと女の子のほほえましい交流がはじまります。しかしそれも長くはつづきません。眼の悪いタスケさんでさえ戦争に行かなければならなくなってしまったのです。ぴかぴかの靴と「かかと」の歌が悲しげに響く、戦争の醜さを外側から描いた傑作です。(7月刊、A5判七二頁・本体一二〇〇円・偕成社)


■なつかしい遊びを語り伝える詩集
▼ジャンケンポンでかくれんぼ ▼馬場与志子詩集/日向山寿十郎 絵
 子どものころ遊んでいた遊びをいまの子どもたちが知らないことを知った著者は、それを語り伝えるため、昔なつかしい遊びを詩に綴って残すことにしました。おはじき、あやとり、お手玉、なわ跳び、かくれんぼ、めんこなど。親から子、そして孫へと読み聞かせをすれば、体を動かして遊ぶことの楽しさ、喜びが子どもにも伝わり、昔遊びがいつまでも受け継がれていくことでしょう。子どもたちが楽しそうに遊んでいる光景や、そのまわりの風景までが目に見えてくるような、誰もが持っている大切な記憶をくすぐられるような詩集です。(7・1刊、A5判一〇四頁・本体一六〇〇円・銀の鈴社)







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