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評者◆添田馨
象徴と民心⑩――象徴としての“アベシンゾー”②
No.3312 ・ 2017年07月22日




■“アベシンゾー”の本質はポスト・トゥルースとも違う。ポスト・トゥルースとは、例え虚偽であっても人々の感情に強く訴えかける政策論であれば、大きな世論形成力を持ちえてしまう状況のことだ。確かに現在の安倍政権は、アメリカの大統領選挙やイギリスのEU離脱の国民投票などに先んじて、この手法を利用しようとしてきたと言えるだろう。しかし、それに成功しているとはとても言いがたい。
 むしろまったく逆だ。共謀罪の“強行採決以上の強行採決”に見られるように、国民大衆に訴えかけるどころか、説明責任など完全に放棄したところで乱暴な議事運営を行い、どんな法案でも通してしまう横暴ばかりが目立つ。それを可能にしているのは無論「数の力」だが、それだけではない。この政権にはもっと確信犯的な負のイメージがつきまとう。国民大衆はもとより政権内部においてでさえ十分なコンセンサスもないままに、いくつもの問題法案を有無をいわさず成立させてしまうことの裏には、憲法改悪後を見据えた政策実行を容易ならしめるための、法環境先取りの意味合いも間違いなくあるはずだ。
 憲法記念日の去る5月3日に、安倍晋三なる自民党総裁は2020年までに憲法を改正して施行したいとする旨のビデオ・メッセージを公表した。これは極めて異常な事態である。仮にも日本国政府の首班と同一の人物が、わざわざ年限をかぎって自らの政治家としての地位を保障している根拠法典を自ら書き換えようと言うのである。しかも歴史的に大きな争点となってきた「第九条」と「自衛隊」をめぐっての発言を以てしてだ。
 これは内閣総理大臣・安倍晋三(A)と自由民主党総裁・安倍晋三(B)が、自分の予定したクーデターの決起を、広く国民に向かって宣戦布告したのと実は同じことなのである。そして象徴としての“アベシンゾー”は、まさにこの安倍晋三(A)と(B)を繋ぐように存在し、まんまと体制内の体制破壊者たりえているのである。
(続く)







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