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評者◆秋竜山
猛スピードで昭和は、の巻
No.3309 ・ 2017年07月01日




■矢崎泰久編『永六輔の伝言――僕が愛した「芸と反骨」』(集英社新書、本体七四〇円)を、読んでいると、永六輔さんの声が耳に響いてくる。永六輔さんのような人がどんどん日本からいなくなってしまう。それが時間の流れというものか。
 〈永六輔が生まれたのは昭和八年(一九三三)四月一〇日です。東京の下町、浅草で一七代続く寺の次男坊でした。〉(本書、まえがきより)
 昭和ヒトケタ世代であった。昭和という時代も遠ざかっていく。ものすごいスピードで。それは昭和の時代の人たちがスピード感を持って亡くなっていくからだ。昭和という時代を見た時、たとえば、昭和ヒトケタ世代、とか昭和フタケタ世代、とか昭和十年代とか昭和二十年代とか昭和三十年代とか、それぞれわけるが、昭和ヒトケタ世代も少なくなっていくと、その次は昭和フタケタ世代ということになるのであるが、そして、しまいには最後の昭和世代が……なんて、ことになるだろう。明治時代も遠い昔の時代であり、それと同様に大正時代もはるか遠い時代だ。そして、昭和の時代も、明治大正を語ると同じような感覚で語ってしまう。
 〈追記 ゲラ刷りに手を入れ、校了した七月七日の昼過ぎ、永六輔さんは帰らぬ人となりました。冷たくなった永さんを前に、私は深い喪失感に襲われた。初めて永さんと出会ったのは二五歳のとき、あれから半世紀以上、ずっと一緒に走ってきた。お互いにわがままを言える間柄だったから、随分憎まれ口も叩いた。でも私は、永さんを親友だと思っていました。あなたにとって私は悪友だったのかな。晩年、よく永さんは、冗談とも本気ともつかない口調で、こう言っていました「矢崎さんより先に死にたくない。何を書かれるか分からないから」でも先に逝ってしまった。(略)〉(本書より)
 永六輔さんと矢崎泰久さんの友情のようなものがこの文面でよく伝わってくる。「相手より先に死にたくない。何を書かれるか分からないから」という会話は、きっとお互いに笑いながら話しただろうと思う。よく、このような会話はするものだ。「俺のほうが先に死ぬよ」「いや、いや俺のほうが先に死ぬ。お前はかなり長生きするよ」「とんでもない、お前のほうが長生きするに決まってる」「いや、そんなことない」「そんなこと、あるんだよ。お前は長生きだ」。このような会話は聞いていて、ほほえましいものだ。相当親しい間柄でなくては話せないものである。心の中ではお互いに長生きしよう!! という気持がある。
 〈「誰かの記憶の中にある限り、その人は存在する」つまり、死は消滅を意味しないという思想。だから永さんが生きている間は、亡くなった彼の友人たちは永さんの近くにいるわけです。それは優しさにも愛にも直結しているように思える。〉(本書より)
 永六輔といえば「上を向いて歩こう」ということになるのだろうか。私は「黒い花びら」のほうが好きだった。あの頃の歌では、裕次郎の「錆びたナイフ」が、「黒い花びら」と並んで特に好きであった。その想い出は、今になっても変わらない。歌は歌っている間じゅうは生きているのである。







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