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評者◆秋竜山
やばい日本語、の巻
No.3308 ・ 2017年06月24日




■結局は、日本語は普遍語としての英語になってしまうのか。三歳の子が英語塾へかよい始めた。大きな声で「バナナはバナーナ。パイナップルはパイナッポー」なんていう。これを聞いた時、日本語はやがて亡びるときがくるだろうと思った。昔は子供が英語を初めて口にするのは中学一年生になってからであった。「ジス・イズ・ア・ペン」とか、「ジャック・アンド・ベティ」とか、これが英語の教科書にのっている最初の英語というものであった。この時は、なぜ中学生になると英語の学習時間があるのかまったくわからなかった。義務教育にしたがっての「ジス・イズ・ア・ペン」であった。水村美苗『増補 日本語が亡びるとき――英語の世紀の中で』(ちくま文庫、本体八八〇円)は、〈第8回小林秀雄賞の意欲作が、大幅増補で待望の文庫化。〉である。〈「然し是からは日本も段々発展するでせう」と弁護した。すると、かの男は、すましたもので、「亡びるね」と云った。(夏目漱石「三四郎」)〉。本書の冒頭の白いページに、この文章がのっている。なにやら意味ありそうなドキッとさせるものがある。
 〈言葉には力の序列がある。一番下には、その言葉を使う人の数がきわめて限られた、小さな部族の中でしか流通しない言葉がある。その上には、民族の中で通じる言葉、さらにその上には、国家の中で流通する言葉がある。そして、一番上には、広い地域にまたがった民族や国家のあいだで流通する言葉がある。今、人々の間の交流が急激にさかんになったことによって、言葉に有史以来の異変が二つおこっていると言われている。一つ目の異変は、下の方の、名も知れる言葉が、たいへんな勢いで絶滅しつつあるということである。今地球に七千ぐらいの言葉があるといわれているが、そのうち八割以上が今世紀の末までには絶滅するであろうと予測されている。〉(本書より)
 心配なのは日本語も絶滅の中にあるのかどーかだ。なにやら、ありそうな予感がする。なぜならば、近年、これは一種の流行語であるのだろうか。よくわからないけど、大人も子供も「やばい」という言葉を日常言葉の中で使っているということだ。この「やばい」という言葉が日本語としてどーかはしらないが、この「やばい」を使わなくては日本語が話せないのではないかと思うくらいに「やばい」を連発する。この「やばい」という言葉を使うことによって、かつて使っていた日本語としての言葉が消えてしまっている。なにかにつけて「やばい」を連発すればよいのである。テレビなどで、やたら「やばい」を使うと、なんだかわからないが、それですませてしまうのである。
 〈二つ目の異変は、今までに存在しなかった、すべての言葉のさらに上にある、世界全域で流通する言葉が生まれたということである。それが今〈普遍語〉となりつつある英語にほかならない。〉(本書より)
 英語が地球語になってしまうのか。もしUFOがやってきて、その宇宙人と会話する時、地球語として英語を使うことになるのではないだろうか。そんな心配をすることはなかった。宇宙人も英語を使っていた。なんて、ことになるのでは。







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