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評者◆添田馨
象徴と民心⑨――象徴としての“アベシンゾー”
No.3306 ・ 2017年06月10日




■象徴としての“アベシンゾー”を私たちはそろそろ真剣に考えなければならぬ。メディア等を通じて大概の人なら知っている「慢心しきったお坊ちゃま」(オルテガ)、あの内閣総理大臣安倍晋三ではない。もう一人の真の権力者“アベシンゾー”のことである。
 わが国の政局が「安倍一強体制」と言われるようになって久しい。だが、それが確かであることの符牒のように、裏で腐敗が進行してきたのもまた確かなことだ。「絶対的権力は絶対に腐敗する」とのアクトン卿の言葉を待つまでもなく、安倍晋三・昭恵夫妻による権力の私物化は目を覆うばかりだ。森友学園問題に端を発して、最近では加計学園をめぐる新学部認可の不透明な背景など、政官界を巻き込んだ疑惑の数々は枚挙にいとまがない。さらに議会を軽視し国民を愚弄するかのような国会答弁の数々。国民の合意も関係閣僚への根回しもなく2020年新憲法施行などと勝手な妄想をぶち上げる神経。公的な場での事実に反する虚偽のスピーチ等々、思い出すだけで頭がクラクラしてくる。
 だが真の権力者たる者の腐敗がこの程度で収まるわけがない。歴史上の事実は、世俗的な支配者が揺るぎない地位を手にしながらも、その上で何をまだ欲しがってきたのかを明瞭に告げている。それは揺るぎない名誉、輝かしい名声以上に、死後においても個人賛美を持続可能にする彼自身の捏造された神話なのだ。
 安倍晋三の場合もその兆候が少しずつ顕れてきている。例えばこの4月に新宿御苑で開催された「桜を見る会」だ。呆れたことに、森友問題で渦中にある夫人も同伴だった。明らかにこれは毎年、春と秋に赤坂御苑で開かれる天皇・皇后両陛下による園遊会の、たちの悪い猿真似である。また、5月3日の憲法記念日には憲法改正にむけた自身のビデオメッセージまで公表した。メディアがこれを取りあげたため、全国にその内容は拡散された。これなどは去年8月の天皇陛下のビデオメッセージの手法の悪辣な踏襲である。
(続く)







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