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評者◆添田馨
象徴と民心⑧――噴飯ものの退位特例法骨子案
No.3304 ・ 2017年05月27日
■何の権威も正統性もない私的な諮問機関に過ぎない「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」なるところが、厚顔にも「天皇陛下の退位に関する皇室典範特例法」骨子案なる作文を発表した。神をも恐れぬ所業とはこのことである。当然のことながら、その内容も噴飯ものだ。
その中に「天皇陛下の退位に至る事情」なる意味不明の但し書きがあり、「83歳と御高齢になられ、今後これらの御活動を天皇として自ら続けられることが困難となることに深い御心労を抱かれていること」が、その事情だと勝手に決めつけている。馬鹿も休み休み言えとはこのことだ。陛下の「おことば」の一体どこにそんなことが述べられていたか? 陛下の御意思に対する、これは良識からの忖度ではなく悪意からの歪曲そのものである。陛下が「ご心労」を抱かれているとしたら、それは安倍政権の憲法改正の動きに対してだ。要するに、いろいろ発言なさる陛下には、はやく退位して欲しいのだと自ら白状しているのである。 同じ趣旨の文章を私ならこう書く。「第九十九条に憲法擁護義務が定められているにもかかわらず、自ら憲法をないがしろにし、これを改悪しようとしている無法者の総理大臣にこれ以上の好き勝手を許さぬため、日本国憲法のいう『崇高な理想』に則って天皇がこれまで続けてきた象徴としての務めを、今の代で終焉させることのないよう、未来恒久それが続いていくことを心底より願って、日本国天皇の地位を滞りなく次代へと繋いでいくために生前での譲位を可能とする皇室典範の改正を望むものである」と。 今回の骨子案の記述には、もうひとつ絶対に許せない一文がある。「3特例規定」の⑥に「上皇(天皇の退位後の呼称:引用者注)に対する名誉毀損・侮辱の告訴は、内閣総理大臣が行う」と書いてあるのである。ここに至っては何をか言わんやである。いま最も陛下を侮辱し、その名誉を踏みにじっているのは、「内閣総理大臣」その人だからである。 |
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