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評者◆小嵐九八郎
大エンターテイナー兼思想家の背景
原点 THE ORIGIN――戦争を描く、人間を描く
安彦良和・斉藤光政
No.3301 ・ 2017年04月29日




■当方にとって、一九七〇年代は党派闘争、通称内ゲバの日日、あとは隠れることと監獄暮らしで、ブンカ的生活に渇えていたがほぼ無縁であった。しかし娘達やその姉さん的兄さん的な友達が、そして「こんな時代に偉えぞ」と数少なくなった一と回りも齢下の学生活動家が「アニメ『宇宙戦艦ヤマト』シリーズは面白い、楽しい、戦争も人間も凄い」と喜んでいたのを鮮やかに覚えている。
 そして時は流れて二十一世紀に入り、小説の編集者から「角川から出ている漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』は累積そろそろ1000万部はいく。ちゃんと勉強し、小嵐さんも頑張りなさいね」と、俺の本のあまりの売れ行きの悪さに対する嫌味を度度受けた。1000万部。作者は安彦良和さんで、なるほど漫画『虹色のトロツキー』、『イエス JESUS』を読むと、画は手塚治虫の方が好ましいが、中身は骨太の視野、思想性は超えていて、歴史や人間の描き方が球体レンズそのもの。冒頭のアニメも絵コンテや作画監督を含めて深く噛んでいるのが安彦さんなのであるが、どんな人物なのか深追いせず、ただただ神棚に飾っておく感じでやり過ごしてきた。でも、書店で、最近出た『原点 THE ORIGIN――戦争を描く、人間を描く』(本体1800円、岩波書店)を手に取った。安彦さん自身も人生の節目について執筆しているのだが、青森の『東奥日報』編集局次長の斉藤光政さんがクールかつ熱く、安彦さんの折折の暮らし、格闘、悩みを書いている。
 無知で当方は恥ずかしくなったが、安彦さんは弘前大の全共闘でノンセクトながら中心で闘い抜き、逮捕・起訴されている。俺みたいに義理人情がメインで、総括なんつうのもきちんとやれていないのと違い、「人間はわかりえない」というところから「わかりあう必死な努力」へと辿り、「憎しみ」ではないところへと行っていて、この悶えとアニメや漫画との関わりと絡みあいが稀有なる大エンターテイナー兼思想家を生んだ背景として解り得る。はい、レーニンの組織論の要である“外部注入論”批判もありますぜい。







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