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評者◆添田馨
象徴と民心⑦――政権の命運を背後でにぎる者とは
No.3300 ・ 2017年04月22日




■象徴には非情な一面がある。本当は知りたくなかった生々しい“真実”が、何らかの象徴を介することで、過剰な意味性となって私たちに迫ってくるケースだ。特に写真のもつ象徴性は、“真実”の姿を私たちの眼にじつにストレートに焼き付けることがある。有名なのは一九四五年九月二十七日、昭和天皇が連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサーと並んで写ったあの一枚である。敗戦後の日本の姿をあれほど強烈に印象づけた写真はほかにない。
 最近、私にこのことを思い出させる一枚の写真があった。二〇一七年二月二十七日付の「星条旗新聞(Stars and Stripes)」に掲載された、安倍総理と稲田防衛相がふたり並んで写っている写真がそれである。これは昨年の十二月二十六日にふたりがハワイの真珠湾を訪問した際に撮られたものだ。だが、使われたのは折しも、国会で大阪の森友学園をめぐる両者の疑惑が取り沙汰されているタイミングにおいてであり、同新聞は明らかに明確な意図をもってこの写真を使用したものと思われる。
 「In Japan,a school scandal threatens the prime minister(日本で、学校をめぐるスキャンダルが総理を脅かしている)」というタイトルで、内容はワシントンポスト紙の記事によると明記されてはいるが、写真そのものは星条旗新聞社が選んだものだ。その構図はどうみても、アメリカの軍高官と思しき人物が、安倍総理と稲田大臣を目の前に立たせて叱りつけているようにしか見えない。総理は意気消沈したように両目を閉じ、また大臣のほうも一緒に怒られているような冴えない表情をしている。私はこの写真を見て、正直、恐ろしいと思った。現在の安倍一強体制のなかで、この二人は政権のまさに中枢に居座り、国内では権勢のトップの地位にある者どうしの筈である。それが、この有様なのだ。
 確かに、このふたりはスキャンダル絡みで非常に旗色が悪い。だが、それにも増して、一国の総理や大臣の命運を真に握っているのは実は“我々”なのだと、この写真は雄弁に主張している。







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