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評者◆秋竜山
ウツボがかんだ 薬指が痛い、の巻
No.3299 ・ 2017年04月15日




■カサゴ釣りといっても、カサゴは釣れず、釣り針の餌につられてやってくるのがウツボである。子供の頃、そんなウツボに私は左手の薬指をガブリとかまれてしまった。その指を見るたびに、ウツボのことが思い出される。ワーワー泣きながら家に帰った。海でのケガは傷あとが痛くないといわれていたが、たしかに痛くはなく、ビックリして大泣きしたのであった。病院へつれていかれるのでもなく、その内になおってしまった。傷だけが残ってしまった。「この傷はウツボにかまれたものだ」なんて、自慢めいた口調でいうと、「へー!! すごいね」なんて反応があり、それを聞くと心好いものがある。年をとっても子供である。
 松浦啓一『したたかな魚たち』(角川新書、本体八〇〇円)に、ウツボのことがちょっぴり出てくる。たとえ、ちょっぴりでも、なつかしい魚である。ウツボは他の魚にない、するどい歯を持っている。
 〈魚の移動手段は言うまでもなく、泳ぎである。ただし、卵からかえったばかりの魚の子供は遊泳力が低いため、「泳ぐ」というよりは海流に流される場合が多い。(略)サメやオオカミウオ、ケチウオ、ミズウオ、オニキンメなどのような大きくて鋭い歯を口にそなえた魚がいる。彼らの恐ろしい顔つきをみると、獲物を鋭い歯で八ツ裂きにしているように思うかもしれない。しかし、彼らの鋭い歯の主な役割は獲物を捕らえ、逃げないようにすることである。〉(本書より)
 子供の頃のカサゴ釣りは、ウツボに釣り糸の餌をとられてしまう。そんな時、ウツボの口にくわえられた釣り針をどのようにして取るか。手で取ろうとしたら、鋭い歯でガブリである。手に持てる程の浜石で、ウツボの頭を打ちくだくのであった。頭をこなごなにして釣り針を取り出す。なんというザンコクな。私はそれをしなかったばかりに、ガブリと指をかまれてしまったのであった。
 〈多くの魚は、程度の差はあるが、顎を前方に突き出すことができる。しかし絶滅した原始的な魚の多くは顎を突き出すことはできなかった。彼らは上顎と下顎を上下に動かして獲物を食べていた。現生の魚はいろいろな方法で顎を前に突き出し、水と一緒に獲物を吸いこむことができる。〉(本書より)
 私は子供の時に、「魚は水の中にいるのに、どーして海水をのんだりしないの?」と、聞いたことがあった。その時、大人の答えは、「そんな馬鹿なことをするわけがない」と、いうことだった。「まちがって、のんだりしないの?」と、さらに聞くと、魚はまちがったりはしないものだ!! と、いう答えであった。わかったようなわからないような答えであった。
 〈魚の目は閉じるためのマブタをもっていない。したがって、ほとんどの魚は目をつぶることができない。(略)魚は水中で生活しているので、目を閉じる必要はない。〉(本書より)
 我々がマブタをひんぱんに閉じるのは目がかんそうするのを防ぐためである。という。それで目をパチパチやるのである。でも、ちょっとやり過ぎのような気もする。写真をうつす時、目を閉じると「アッ!! 目をつむってしまった」と、いってうつしなおす。テレビを観ていると、出演者のマブタは見ひらいたままである。実に不自然である。そういう目でテレビを観ると、おそろしい。







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