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評者◆秋竜山
ユーモアの旗手による大会話術、の巻
No.3297 ・ 2017年04月01日




■二人きりで話をする時、相手の顔を見ながら、なんて恥ずかしくてできるわけがない。特別に恥ずかしがり屋というものでもないが、初対面の時でも、一度も相手の顔を見ない。こっちもそうだが、相手もそうだ。だから別れた後、相手がどのような顔をした人であるか印象がないし、どんな顔をしていたのか。まあ、そんなものだろう。相手の目を見ながら話すなんて考えられないことだ。そして、一番理想なのは薄暗い中での会話が、おだやかな雰囲気になり、しゃべりやすいものだ。昔の喫茶店などはうまくできていたようだ。お互いに相手の目と目を見つめあって話すなど、どこか異常である。「オイ、きみはどこを見て話しているのだ。私の目を見て話したまえ。それとも私の目が見れないのか」と、いわれたら。どーしたらよいのか困ってしまうだろう。
 清水義範『ウケる! 大人の会話術』(朝日新書、本体七八〇円)では、大人の会話術について。
 〈たとえば、長年連れそった夫婦などは、今さら相手の顔をじっくり見なくても日常の会話はできる、と思っていたりする。二人ともテレビのほうを見たまましゃべることもできる。〉(本書より)
 夫婦であって、そーである。
 女房に「あたしの顔が見れないの!!」と、いわれる時は、いつも無言の中に何かある。二人ともテレビを見ながらしゃべっている。テレビのない昔だったら、ラジオを見ながらしゃべっていたのだろうか。「あなた!! テレビを消しなさいよ」と、女房。それより先に、いきなり消されるだろう。「バカ!! 消すな観ているんだから」なんて、いえないだろう。本書では、〈相手が話している時に、どこを見ていればよいか、というのも「聞く技術」のひとつである。〉と、いう。
 〈そして、その問いの答えは、話し手の顔のほう、である。ここ、少しぼんやりとした言い方をしていることに注意してほしい。聞き手が、話し手の顔をまじまじと見つめるというのは、なんとなく穏やかでなくてよくないのである。特に、相手の両眼をハタとにらみつけるようにして話を聞くのはやめよう。真正面から目をにらみつけられると、なんだよ、文句あるのかよ、というような気がするからだ。喧嘩売ってるのかよ、というようにも感じる。〉(本書より)
 そこで、どーしたらよいのか。本書では、その答えが面白くて正しいだろう。実際にやってみることもよい。〈相手の鼻の十センチほど前の空間をぼーっと見ているのがいい、なんていう説もある。〉という。
 〈こういうふうに言う人もいる。話し手のネクタイの結び目あたりをぼんやり見る。〉〈相手の喉元のあたりをぼんやり見ると言ってもいいだろう。〉〈時には相手の全身を見たり、手元を見たり、自分の手元を見たりと、視線があちこちに動くというのが自然であろう。〉(本書より)
 ユーモアの旗手による著者の大会話術である。相手の顔をなるべく見ないように会話するのなら、いっそのこと目をつむったらどーだろうか。もちろん二人して目をつむっているのである。その内、話し声が聞こえなくなる。話し声にかわって、いびき合戦となるだろう。会話とはいびきなり! とか。







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