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評者◆秋竜山
物理学とは謎との戦いである、の巻
No.3296 ・ 2017年03月25日




■「ブツリ」と、きかれて、答えられるだろうか。「ハテ?」と、考える。何だろう。何のことかわからないと思う。わからない人のほうが多いだろう。片仮名でいわれるからであって、漢字で「物理」といわれると、なんだ!! その物理のことか、とすぐわかる。しかし、「物理学」と「学」の文字をつけ加えると、とたんにまたわからなくなってしまう。一般的に物理とか物理学というと、ノーベル賞とか物理学者などが連想される。ニュートンとかガリレオとかアインシュタインとか知らない人はいないだろう。
 松原隆彦『目に見える世界は幻想か?――物理学の思考法』(光文社新書、本体七八〇円)という本。この本のタイトルで、まず、アレ? と思う。タイトル文字だけでは、ナンセンスマンガの本かな? と、思ってしまうだろう。あまりにも、タイトルがマンガ的であるからだ。ところが、そーではないとわかる。〈物理学の思考法〉という文字で、これは、マンガなんかではなく、文字の本であることがわかる。サテ? どーしようか。買って読む本か、それとも、と一旦手にした本であるが書店の棚へもどす。この動作も〈目に見える世界は幻想か?〉なんて、いったいどのようなことが書かれてあるか、棚へもどした本をふたたび手にとらせてしまう。
 〈物理学とはどんなものか 物理学の目的 物理学の目的は壮大だ。端的に言えば、この世界がどういうものなのか、どういう原理原則で動いているのか、その本質は何なのかを明らかにしようとする。この世界は実にいろいろなものから成り立っていて、そのすべての本質を見極めようとしているのだ。いま読者の目の前にもいろいろなものが見えているだろう。まずこの本である。それは紙とインク、もしくは電子デバイスの画面だ。その向こうには何があるだろう。どこでこの本を読んでいるのかによって千差万別だが、おおむね机やライトがあるかもしれない。ひょっとすると、優雅にビーチで読んでいて、目の前に海が広がっているかもしれない。かくいう筆者はいま三河湾を眺めながらこの原稿を書いている(引用者註・ワッ!! うらやましいかぎりだ)。読者の周りには光が満ち溢れているだろう。光がなければ本を読めない。〉(本書より)
 サテ、問題は本書のタイトルである。それを知りたくて、この本を読みはじめたのだ。
 〈本書のタイトルとも関係するが、人間の見た目通りの世界は、本当の世界の姿なのではなく、そうではない何か別の世界のようなものから現れ出てきたようなのだ。そうでなければ、見た目通りの雑多な世界の中に、どこでも成り立つ物理法則というものを見つけることはできないだろう。だが、その別の世界のようなものが何なのか、物理学者にとっても謎だ。〉(本書より)
 物理学とは謎との戦いである。〈目に見える世界は幻想か?〉も謎である。目に見える世界があるのなら、目に見えない世界もあるのかもしれない。目に見える世界が幻想なら、目に見えない世界は何であるか。目に見えない世界も幻想であったら、幻想でない世界というのがあるのだろうか。これが幻想でない世界というのを眺めてみたいものである。







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